自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ぼくの大切なともだち 2006年

友情をめぐるフレンチコメディ

フランス、パトリス・ルコント監督

他人への思いやりがなく、仕事だけが生きがいの美術商フランソワは自分の誕生日に、仲間から「お前の葬式には誰も来ない」と言われてしまう。

フランソワは10日以内に親友を紹介すると言い、20万ユーロの「友情の泪壺」を賭ける。

フランソワは親友リストをつくり、一番の友達を訪ねるが、その男から「商売敵だ、お前を友達と思う奴はいない」と言われ、小学生の頃から親友だと思っていた男からは「クラス中がお前を嫌っていた」

 

いつも笑顔で人に好かれるタクシー運転手のブリュノに友達をつくるコツを教えてもらう。でもなかなかうまくいかない。意外なことにブリュノさえも「人は孤独だ」という。実はブリュノにはかつて大親友から裏切られた苦い過去があった。

 

彼は物知りで「クイズ$ミリオネア」に出演したかったが、あがり症の彼はいつも予選で落とされていた。しかしフランソワの計らいでブリュノは出演することになる。

一年後、フランソワの誕生日にはたくさんの友達が集まった。

 

フランソワに反発し辛辣だった共同経営者でレズのカトリーヌも、「あなたと友達になりたかったの」と本音を明かす。

泳ぐひと 1968年

ある夏の日の出来事

アメリカ、フランク・ペリー監督

夏の日、森の中の道、落ち葉を踏みしめて中年男ネッド・メリルが歩いてくる。彼は水着一枚だけの姿だった。

裕福な友人たちが歓迎してくれる、友人宅のプールで泳ぎ終わり、ネッドはある計画を立てる。森の中にある友人たちのプール伝いに泳ぎながら郡境をこえて自分の家に帰ろうとする。

久しぶりに会う友人たちと談笑しながらプールで泳ぐ。水のないプール、パーティ客で混雑しているプール。かつての恋人との険悪な会話。

誰もが「資産家の奥さんと娘さんたちはどうしているの」と訊く、彼はこう答える「妻は元気だよ、娘たちはテニスをしている」

やがてネッドの今の境遇が明らかになってくる。彼が破産し、妻と離婚し娘たちは警察沙汰に近いことを起こしていた。仕事がなく、借金があることも分かってくる。ある男からは偽善者と罵られる。

 

強い雨の中、ネッドは丘の上の自宅にたどり着くが、そこは廃墟だった。テニスコート無人だった。ドアを叩くが誰も出てこない。雨は降り続いている。

 

徐々に真実が明らかになるというサスペンスタッチのいい映画だった。破滅と幻影を描き、ストーリーはシンプルだが、指に小さなトゲが刺さったような痛みを感じた。

告発 1994年

実話に基づいた物語

アメリカ、マーク・ロッコ監督

1941年、アルカトラズ刑務所で脱獄囚のヘンリー・ヤングが食堂で一人の囚人をスプーンで刺し殺した。

ヘンリーは17歳の時、たった5ドルを盗んだ罪でアルカトラズ刑務所に収監されていたが、副刑務所長グレンの残忍な拷問に耐えられなくなり、脱獄を図ったがある囚人の密告で失敗に終わった。そして地下牢に3年間も閉じ込められていた。

そのため精神に異常をきたし、地下牢から出た日に、密告した囚人を衝動的に殺したのだ。

官選弁護人として新人弁護士のスタンフィルが面会するが、ヘンリーは何も話そうとはせず、死刑になることを望んでいた。なぜならアルカトラズ刑務所に戻って、二度とあの恐怖を味わいたくなかったからだ。

ヘンリーの関心はただ一つだった。それは野球選手ディマジオの成績だけだった。

弁護にたったスタンフィルはこの殺人は刑務所内の非人道的な行為の結果でもあると主張し、刑務所長、副所長を告発した。その報道は社会に大きな衝撃を与えた。

 

緊迫した法廷劇でもあったが、それ以上に人の尊厳を失わせるアルカトラズ刑務所への告発の物語だった。

やがてアルカトラズ刑務所は廃止された。でも後に「アルカトラズからの脱出」「ザ・ロック」などのおもしろい映画を残した。