自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「書く」と自分が見えてくる

冥利に尽きる幸運 高峰秀子は昭和四年、子役としてデビューした。昭和二十五年、日本最初のカラー映画「カルメン故郷に帰る」、映画産業のピーク、昭和二十九年には代表作だと言われている「浮雲」「二十四の瞳」に出演している。 1975年、51歳の高峰…

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

どのような人生もミステリアス 2019年、アメリカ、ライアン・ジョンソン監督 世界的なミステリー作家ハーラン・スロンビーは莫大な財産を抱え、大邸宅に住んでいた。85歳の誕生パーティの翌日に、彼の部屋で遺体として発見される。 謎の人物から調査の…

ハリーとトント 1974年

人生は目的地のない旅のよう アメリカ ポール・マザスキー監督 ニューヨーク、古いアパートが取り壊されることになり、72歳のハリーと愛猫のトントは長男の家に厄介になるが、どうも居心地がよくなかった。 ハリーはシカゴで書店を営む娘を訪ねる旅に出発…

ルース・エドガー 2019年

目に見えない壁 アメリカ ジュリアス・オナー監督 バージニア州、アーリントン、黒人で17歳の高校生ルースは7歳のとき、戦火のアフリカから白人夫婦(エイミーとピーター)の養子になった。彼は文武両道に秀で、スピーチも巧みで、誰からも称賛される模範…

スパイの妻(劇場版) 2020年

ノスタルジックで耽美的な幻影 日本 黒沢清監督 1940年の神戸、貿易会社を経営する福原優作と妻の聡子は裕福な暮らしをしていた。優作は満州で関東軍が細菌兵器の実験を続けていると知り、機密書類をアメリカで公表して、アメリカを参戦させようと考えて…

Girlガール 2018年

男の身体に女の心が宿っている ベルギー、ルーカス・ドン監督 ドン監督は2009年ベルギーの新聞のトランスジェンダーの少女がバレリーナになるために奮闘しているという記事からこの映画を思いついた。 トランスジェンダーの15歳のララは本名をヴクトル…

子鹿物語 1946年

開拓者たちがこの国をつくった アメリカ クレランス・ブラウン監督 1878年フロリダ、開拓地で農作業をつづけるバクスター一家、11歳の少年ジョディは父ペニー、母オリーと3人で暮らしていた。 町から離れ、近くにはフォレスト一家が住んでいるだけだ…

シェイクスピアの庭 2018年

すべてのものは塵にかえる イギリス ケネス・プラナー監督 1613年、「ヘンリー八世」を上演中のロンドンのグローブ座が大火災で焼失した。49歳のシェイクスピアは断筆し故郷ストラッドフォードの家族のもとに帰る。 そこでは妻アンと長女スザンナ、次…

淀川長治と沢木耕太郎

「沢木耕太郎セッションズ」より 1991年に「ダカポート」に掲載された沢木耕太郎と淀川長治の対談 映画評論家の批評はほとんど読まないが、沢木耕太郎の映画評だけはよく読んでいた。文章が端正で、どこか感性が私に似ているような気がしたからだ。 「あ…

沈黙は金 1946年

パリの恋とユーモアと粋 フランス ルネ・クレール監督 20世紀初頭のパリ、当時、活動写真とよばれた映画の黎明期。監督のエミールはかつて俳優であり、独身の今も女に不自由していなかった。彼を慕っている青年ジャックは俳優であり、助手、大道具係でもあ…