自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

香山リカ 堕ちられない「私」

高田純次のいい加減さと調子のよさには笑ってしまうが、脱力系の柔軟さもある。 精神科医の香山リカ『堕ちられない「私」』はどこか高田純次と通じるものがあるような気がした。 香山はこのように書いている。 うつ病などの心の病にかかったり、ドラッグ、暴…

許されざる者 1992年

無法者と娼婦たち アメリカ、クリント・イーストウッド監督 1880年、かつて無法者として悪名高かったウィリアム・マニー、今は最愛の妻を亡くし、幼い息子と娘と暮らす貧しい農夫だった。 ある日、若いガンマン、キッドが賞金稼ぎの仕事をもってきた。ワ…

透明人間 2020年

見えないストーカー アメリカ、リー・ワネル監督 セシリアは光学研究者の第一人者であるエイドリアンと暮らしていたが、支配欲のつよい彼との生活が苦痛だった。ある夜、妹エミリーの手助けで豪邸を逃げ出す。 2週間後、セシリアは友人の警察官ジェームズの…

誰のものでもない

ダノス・タノビッチ監督に「ノー・マンズ・ランド」という作品がある。93年、ボスニア紛争下のボスニアとセルビアの中間地帯(ノー・マンズ・ランド)に取り残された二人の兵士の物語だ。 「ノー・マンズ・ランド」という言葉を初めて知った。 手のひらの…

荒野の誓い 2017年

殺し続けると慣れてくる アメリカ、スコット・クーパー監督 1892年、ニューメキシコ州、多くの先住民(ネイティブアメリカン)を殺してきたジョー・ブロッカー大尉はシャイアン族の首長イエロー・ホークとその家族をモンタナ州に護送する任務に就く。 か…

再会の夏 2018年

戦争と犬と男と女 フランス、ベルギー、ジャン・ベッケル監督 第一次大戦が終わった1919年の夏、フランスの片田舎、復員兵のジャック・モルラックが営倉に留置されていた。 彼を軍事裁判にかけるかどうかを判断するために軍判事のランティエ少佐がやって…

西部戦線異状なし 1930年

戦場の蝶々 アメリカ、ルイス・マイルストン監督 第一次世界大戦、フランスとドイツの西部戦線での凄まじい塹壕戦を描いた90年前の映画。反戦映画の原型とでもいうべき作品で、少しも風化していない。ドイツ兵をアメリカ人俳優が演じ、言葉も英語だった。 …

Swallow スワロウ 2019年

血を流しながら画びょうを飲み込む アメリカ、フランス、カーロ・ミラベラ=デイビス監督 ニューヨーク郊外の豪邸に住む主婦ハンターはエリートの夫リッチーと裕福な生活を送っていた。しかし夫と義父母は教養のないハンターをないがしろにしていた。 「本当…

デンマークの息子 2019年

数年後のデンマーク デンマーク ウラー・サリム監督 23人が亡くなった爆破テロ事件から一年、2025年、デンマークのコペンハーゲンでは難民や移民の排斥を訴える民族主義集団の過激な行動が続いていた。 彼らは「デンマークの息子」と呼ばれ、その後ろ…

罪と女王 2019年

女性監督が描く性の衝動 デンマーク、スウェーデン メイ・エル・トーキー監督 性暴力や虐待を受けている児童を守る女性弁護士アンナは医師の夫ペーターと双子の娘たちに恵まれて幸せな家庭を築いていた。 夫と前妻の間の17歳の息子グスタフがスウェーデン…