自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

日本映画

658km、陽子の旅 2022年

父親の幻影と旅をする 日本、熊切和嘉監督、113分 東京で一人暮らしをするフリーターの陽子は42歳で、部屋に閉じこもって、自堕落な日々をおくっていた。従兄の茂が父親の訃報を伝えに来る。父親とは20年も疎遠になっていた。 茂やその家族と車で青森…

ケイコ目を澄ませて 2022年

ケイコは目がいいんです 日本、三宅唱監督、99分 2020年12月の東京、先天性の聴覚障害で両耳とも聴こえないケイコはホテルの清掃係として働きながら、下町の荒川ボクシングジムに通い鍛錬を重ねていた。 耳が聴こえないというのは大きなハンディだっ…

トウキョウソナタ 2008年

すべてがラストシーンに集約される 日本、オランダ、香港、黒沢清監督、119分 佐々木家は46歳の父親竜平、母親の恵、大学生で長男の貴そして小学6年生の次男健二の4人家族だった。父親はリストラされたことを家族に打ち明けられなかった。 母親は食事…

せかいのおきく 2023年

江戸の糞尿譚 日本、阪本順治監督 89分 下肥買いの矢亮と紙屑拾いの中次は厠のひさしの下、雨宿りをしているときに、武家育ちで22歳のおきくと知り合う。下肥買いとは民家の糞尿を買い、それを百姓に肥料として売る仕事だった。 おきくは浪人の父と貧乏…

東京兄妹 1995年

水彩のように淡く、油彩のように深い 日本、市川準監督 92分 昔の風情が残る東京の下町、両親を亡くした兄妹、兄の健一は古書店に勤め、高校を卒業した妹の洋子は駅前の写真店で働いていた。 都電が走り、古い商店街や鬼子母神があり、鍋をもって豆腐を買…

PLAN75、2022年

SF的な発想の「姥捨て山」伝説 日本、フランス、フィリピン、カタール、早川千絵監督、112分 少子高齢化が一層進んだ近未来の日本。満75歳から自らの生死を選択できる制度「プラン75」が国会で可決・施行され、超高齢化社会の問題解決策として世間に受け…

ある男 2022年

アイデンティティを喪失した男のミステリー 日本、石川慶監督、121分 息子と暮らすシングルマザー里枝は口数の少ない谷口大祐と再婚をする。やがて娘が生まれ、4年近くの幸せな日々が過ぎた。ところが大祐は不慮の事故で亡くなってしまう。 一周忌に大祐…

メタモルフォーゼの縁側 2022年

良くも悪くもこれが日本映画 日本、苅山俊輔監督、118分 鶴谷香央理の漫画「メタモルフォーゼの縁側」を実写映画化。ちなみにメタモルフォーゼとは「変化」「変身」の意味。 17歳の冴えない女子高生うらら、彼女は毎晩、こっそりとBL(ボーイズラブ)…

「幽婚」1998年、日本

ブロ友さんに紹介されたテレビドラマをYouTubeで鑑賞 山本恵三監督、脚本市川森一 70分 岩淵孝行は、背中に刺青のある元ヤクザだが、今は霊柩運送会社の運転手として真面目に働いていた。 ある日、修という男が急死した婚約者・佐和の遺体を、故郷の四国・…

警察日記 1955年

様々なエピソードをスケッチ風に描いた 日本、久松静児監督 戦後間もない昭和20年代、会津磐梯山の麓の田舎町。 花嫁姿でバスに乗り、披露宴に向かう新婦、戦争で5人の息子を亡くし、精神を病んだ元校長、地元出身の通産大臣の歓迎会、貧しくて身売りする…

悪魔の手毬唄 1977年

腰の曲がった不気味な老婆 日本、市川崑監督、原作横溝正史 昭和27年、閉鎖的で因習の村、鬼首村(おにこべむら)の温泉「亀の湯」にやってきた金田一耕助。 彼は磯川警部から20年前、昭和6年にこの村で起こった未解決事件の再調査を依頼されたのだ。 …

ドライブ・マイ・カー(インターナショナル版)2021年

179分を飽きさせないストーリー 日本、濱口竜介監督 役者で演出家の家福は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある日、くも膜下出血で突然亡くなる。妻は愛しながらも夫を裏切り、浮気を繰り返していた。 そしてセックスした後に「奇妙な…

座頭市物語 1962年

座頭市シリーズの第一作 日本、三隈研次監督、原作は子母沢寛の短篇 天保の頃、下総、旅の途中だった座頭市は地元のヤクザ飯岡助五郎一家に草鞋を脱ぎ、しばらくの間、逗留することになる。 助五郎は新興ヤクザの笹川繁蔵一家と対立していた。しかし笹川一家…

その壁を砕け 1959年

芦川いづみの可憐さ 日本、中平康監督、脚本新藤兼人、撮影姫田真佐久、音楽伊福部昭 自動車修理工の渡辺三郎は念願の車を買った。新潟で看護婦として働いている恋人のとし江と結婚するために、東京から車を走らせた。 深夜、レインコートの若い男を乗せるが…

梅切らぬバカ 2021年

剪定しないといい梅の実がならない 日本、和島香太郎監督、77分 占い業を営む山田珠子は50歳の自閉症の息子忠男と暮らしていた。庭の梅の木は私道まで伸びて通行の邪魔になっていた。梅の木を切ろうとすると、忠男はまるで自分が切られるかのように怖が…

少年時代 1990年

軍歌以外の歌を知らない時代 日本、篠田正浩監督、脚本山田太一、撮影鈴木達夫、美術木村威夫 昭和19年、夏、東京の小学5年生の風間進二は富山の伯父のもとに疎開する。風泊(かざどまり)の戦前の駅舎や日本家屋や雪景色が美しい。 進二はすぐに地元のガ…

横道世之介 2012年

あの日にかえりたい 日本、沖田修一監督、160分 1987年、長崎から上京して、法政大学に入学した18歳の横道世之介。 最初に友達になった倉持、女子学生の阿久津唯、パーティガールで年上の千春、ゲイの同級生加藤、お嬢様育ちのガールフレンド祥子・…

洲崎パラダイス赤信号 1956年

かけ、もり、が25円の時代 日本、川島雄三監督 昭和30年頃、勝鬨橋、甲斐性なしの義治と着物姿の蔦枝は持ち金もなくなり、どこに行こうかと迷っていた。 「これからどうするの」「どうしようか、どこに行こうか」二人はバスに乗って、洲崎で降りた。そこ…

風船 1956年

人生は風船のように 日本、川島雄三監督 戦後11年、東京、カメラメイカーの社長として成功した村上春樹は妻房子、息子圭吉、娘珠子と高台の豪邸で暮らしていた。 珠子は子どもの頃に小児麻痺にかかり、左手が不自由で身も心も弱かったが、純真な娘だった。…

赤い天使 1966年

バケツには切り取られた手足があふれている 日本、増村保造監督 昭和14年、24歳の従軍看護婦、西さくらは中国戦線の病院に赴任した。戦地の男たちは本能的な性に飢えていた。赴任してすぐに西は兵士にレイプされてしまう。 野戦病院を転々としてゆく西看…

赤い殺意 1964年

土俗性としたたかさ 日本、今村昌平監督 家の横を蒸気機関車が爆音をたてて通り過ぎてゆく。二匹のハツカネズミが籠のなかで走り回っている。オープニングからただならぬ気配が漂ってくる。空腹のハツカネズミがもう一匹のはらわたを食いちぎってしまう。 東…

すばらしき世界 2021年

もう一人の「フーテンの寅」 日本、西川美和監督 13年の刑期を終えて出所してきた殺人犯三上、彼は人生の大半を裏社会と刑務所で過ごしてきた。身元引受人の弁護士庄司の助けを借りながら社会に復帰しようとする。 テレビディレクターの津乃田は三上が子供…

私が棄てた女 1969年

60年代の風俗映画 日本、浦山桐郎監督 自動車の部品会社に勤める吉岡努は専務の姪マリ子と恋仲だった。吉岡は出世のためには手段を選ばない野心家だった。 ある夜、クラブの女から森田ミツのことを知らされ、7年前の1961年春、大学生時代の出来事を思…

野菊の如き君なりき 1955年

野菊とりんどうの花 日本、木下恵介監督 渡し舟に一人の老人が乗っている。老人はこの地で育った斎藤政夫で船頭に思い出を語っていた。60年前の回想から物語は始まる。 政夫は大きな屋敷の旧家の次男坊だった。母が病弱なため従妹の民子が手伝いに来ていた…

無法松の一生 1943年

遠い明治の幻影 日本、稲垣浩監督 明治30年、九州小倉、富島松五郎、彼は無法松と呼ばれる喧嘩っ早い人力車夫だった。ある日、怪我をした少年敏雄を助け、家に送り届ける。そこは陸軍大尉、吉岡小太郎の家で夫人のよし子がいた。 吉岡は突然の病気で亡くな…

竜二 1983年

今日もドスの雨、刺せば監獄、刺されば地獄 日本、川島透監督 新宿、山東会の幹部、花城竜二は舎弟の二人に賭博場を仕切らせて、優雅な暮らしを続けていた。竜二には別れた妻と幼い娘がいた。彼はヤクザの生活に不安を感じ、落ち着かなくなってきた。 夫婦で…

罪の声 2020年

グリコ・森永事件をモデルにしたミステリー 日本、土井裕奏監督 2018年、京都でテイラーを営む曽根俊也は父の遺品のなかにカセットテープと手帳を見つける。気になってテープを聴くと、それは1984年に起こった昭和最大の未解決事件(ギン萬事件)で…

天然コケッコー 2007年

カラフルな水彩画 日本 山下敦弘監督 山と海に囲まれた自然豊かな村、中学二年生の石田そよは小学生と中学生をあわせても6人だけという学校に通っていた。 そこに東京から転校生がやってくる。都会の雰囲気をもった大沢広海という中学二年生の男子だったが…

夕凪の街 桜の国 2007年

50年にわたる被爆者家族の物語 日本 佐々部清監督 原爆投下から13年が経った昭和33年(1958年)の夏、広島、26歳の平野皆美は母と雨漏りがするあばら家に住んでいた。そこは被爆者たちが住んでいる地域で、銭湯では身体にケロイドのある女性が多…

駅/STATION 1981年

昭和歌謡の世界 日本、降籏康男監督 メキシコ・オリンピックの射撃選手である警察官三上と3人の女たちの関わりを北海道の「駅」を舞台に描く。 1968年1月、妻のたった一度の過ちを許すことができなかった三上は妻直子と離婚する。直子は幼い息子をつれ…