自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

日本映画

その壁を砕け 1959年

芦川いづみの可憐さ 日本、中平康監督、脚本新藤兼人、撮影姫田真佐久、音楽伊福部昭 自動車修理工の渡辺三郎は念願の車を買った。新潟で看護婦として働いている恋人のとし江と結婚するために、東京から車を走らせた。 深夜、レインコートの若い男を乗せるが…

梅切らぬバカ 2021年

剪定しないといい梅の実がならない 日本、和島香太郎監督、77分 占い業を営む山田珠子は50歳の自閉症の息子忠男と暮らしていた。庭の梅の木は私道まで伸びて通行の邪魔になっていた。梅の木を切ろうとすると、忠男はまるで自分が切られるかのように怖が…

少年時代 1990年

軍歌以外の歌を知らない時代 日本、篠田正浩監督、脚本山田太一、撮影鈴木達夫、美術木村威夫 昭和19年、夏、東京の小学5年生の風間進二は富山の伯父のもとに疎開する。風泊(かざどまり)の戦前の駅舎や日本家屋や雪景色が美しい。 進二はすぐに地元のガ…

横道世之介 2012年

あの日にかえりたい 日本、沖田修一監督、160分 1987年、長崎から上京して、法政大学に入学した18歳の横道世之介。 最初に友達になった倉持、女子学生の阿久津唯、パーティガールで年上の千春、ゲイの同級生加藤、お嬢様育ちのガールフレンド祥子・…

洲崎パラダイス赤信号 1956年

かけ、もり、が25円の時代 日本、川島雄三監督 昭和30年頃、勝鬨橋、甲斐性なしの義治と着物姿の蔦枝は持ち金もなくなり、どこに行こうかと迷っていた。 「これからどうするの」「どうしようか、どこに行こうか」二人はバスに乗って、洲崎で降りた。そこ…

風船 1956年

人生は風船のように 日本、川島雄三監督 戦後11年、東京、カメラメイカーの社長として成功した村上春樹は妻房子、息子圭吉、娘珠子と高台の豪邸で暮らしていた。 珠子は子どもの頃に小児麻痺にかかり、左手が不自由で身も心も弱かったが、純真な娘だった。…

赤い天使 1966年

バケツには切り取られた手足があふれている 日本、増村保造監督 昭和14年、24歳の従軍看護婦、西さくらは中国戦線の病院に赴任した。戦地の男たちは本能的な性に飢えていた。赴任してすぐに西は兵士にレイプされてしまう。 野戦病院を転々としてゆく西看…

赤い殺意 1964年

土俗性としたたかさ 日本、今村昌平監督 家の横を蒸気機関車が爆音をたてて通り過ぎてゆく。二匹のハツカネズミが籠のなかで走り回っている。オープニングからただならぬ気配が漂ってくる。空腹のハツカネズミがもう一匹のはらわたを食いちぎってしまう。 東…

すばらしき世界 2021年

もう一人の「フーテンの寅」 日本、西川美和監督 13年の刑期を終えて出所してきた殺人犯三上、彼は人生の大半を裏社会と刑務所で過ごしてきた。身元引受人の弁護士庄司の助けを借りながら社会に復帰しようとする。 テレビディレクターの津乃田は三上が子供…

私が棄てた女 1969年

60年代の風俗映画 日本、浦山桐郎監督 自動車の部品会社に勤める吉岡努は専務の姪マリ子と恋仲だった。吉岡は出世のためには手段を選ばない野心家だった。 ある夜、クラブの女から森田ミツのことを知らされ、7年前の1961年春、大学生時代の出来事を思…

野菊の如き君なりき 1955年

野菊とりんどうの花 日本、木下恵介監督 渡し舟に一人の老人が乗っている。老人はこの地で育った斎藤政夫で船頭に思い出を語っていた。60年前の回想から物語は始まる。 政夫は大きな屋敷の旧家の次男坊だった。母が病弱なため従妹の民子が手伝いに来ていた…

無法松の一生 1943年

遠い明治の幻影 日本、稲垣浩監督 明治30年、九州小倉、富島松五郎、彼は無法松と呼ばれる喧嘩っ早い人力車夫だった。ある日、怪我をした少年敏雄を助け、家に送り届ける。そこは陸軍大尉、吉岡小太郎の家で夫人のよし子がいた。 吉岡は突然の病気で亡くな…

竜二 1983年

今日もドスの雨、刺せば監獄、刺されば地獄 日本、川島透監督 新宿、山東会の幹部、花城竜二は舎弟の二人に賭博場を仕切らせて、優雅な暮らしを続けていた。竜二には別れた妻と幼い娘がいた。彼はヤクザの生活に不安を感じ、落ち着かなくなってきた。 夫婦で…

罪の声 2020年

グリコ・森永事件をモデルにしたミステリー 日本、土井裕奏監督 2018年、京都でテイラーを営む曽根俊也は父の遺品のなかにカセットテープと手帳を見つける。気になってテープを聴くと、それは1984年に起こった昭和最大の未解決事件(ギン萬事件)で…

天然コケッコー 2007年

カラフルな水彩画 日本 山下敦弘監督 山と海に囲まれた自然豊かな村、中学二年生の石田そよは小学生と中学生をあわせても6人だけという学校に通っていた。 そこに東京から転校生がやってくる。都会の雰囲気をもった大沢広海という中学二年生の男子だったが…

夕凪の街 桜の国 2007年

50年にわたる被爆者家族の物語 日本 佐々部清監督 原爆投下から13年が経った昭和33年(1958年)の夏、広島、26歳の平野皆美は母と雨漏りがするあばら家に住んでいた。そこは被爆者たちが住んでいる地域で、銭湯では身体にケロイドのある女性が多…

駅/STATION 1981年

昭和歌謡の世界 日本、降籏康男監督 メキシコ・オリンピックの射撃選手である警察官三上と3人の女たちの関わりを北海道の「駅」を舞台に描く。 1968年1月、妻のたった一度の過ちを許すことができなかった三上は妻直子と離婚する。直子は幼い息子をつれ…

スパイの妻(劇場版) 2020年

ノスタルジックで耽美的な幻影 日本 黒沢清監督 1940年の神戸、貿易会社を経営する福原優作と妻の聡子は裕福な暮らしをしていた。優作は満州で関東軍が細菌兵器の実験を続けていると知り、機密書類をアメリカで公表して、アメリカを参戦させようと考えて…

アルプススタンドのはしの方 2020年

♪この青すぎる空が・・・♪ 日本、城定秀夫監督 夏の甲子園、高校野球の一回戦に出場している母校のためにアルプススタンドに応援にきた女性演劇部員の安田と田宮、元野球部員の藤野、優等生の女学生宮下、吹奏楽部の女性部長の久住、熱血教師の厚木、彼らが…

ラストレター 2020年

岩井ワールドの叙情性 日本 岩井俊二監督 舞台は緑あふれる宮城県、姉三咲の葬儀に参列した妹の裕里、三咲あての高校の同窓会の招待状を手渡された。姉の死を告げるために同窓会に出席するが、姉と勘違いされてしまう。 同窓会で初恋の相手乙坂鏡史郎と再会…

blank13 2017年

幕間コントのおもしろさ 日本 斎藤工監督 焼き場の焼却炉から物語は始まる。高熱の炎で遺体は燃やされる。 ギャンブル好きで多額の借金をかかえた父親が突然失踪した。残された妻と二人の息子は貧しい生活ながら3人で力をあわせて生きてゆく。 13年後、父…

祇園の姉妹(きょうだい)1936年

花街に生きる女たち 日本 溝口健二監督 オリジナルは90分だがフィルムが失われて、現在みることができるのは69分版でこの20分の違いは結構大きいような気がする。 1953年に撮られた溝口監督「祇園囃子」に比べると時代のせいなのか少し重い雰囲気…

キュクロプス 2018年

自主製作映画2本 日本 大庭功睦監督 妻とその愛人を殺した罪で14年間服役していた篠原は、刑事の松尾から真犯人はヤクザの若頭財前だと知らされる。財前の手下の西が密告してきたのだ。 事件当時、篠原はアルコール依存症ではっきりとした記憶がなかった…

岬の兄妹 2018年

聖なる無知 日本 片山慎三監督 片足の悪い兄良夫と自閉症の妹真理子は港町のボロ家に住んでいた。暗い部屋は乱雑で荒れ放題だった。すべての窓が段ボールで覆われ日の光のささない部屋が兄妹の境遇をあらわしていた。 兄が失業してしまうと家賃も電気代も払…

祇園囃子 1953年

千年の古都に生きる女たち 日本 溝口健二監督 田舎には美しい自然がある。町にはなにがあるのだろうか。町の魅力は路地だと思う。路地には人々の歓びや哀しみがあふれている。狭い路地をさまよっていると人の息吹を感じ、どこか懐かしい気分になる。 その路…

飢餓海峡 1964年

戻る道ないぞ、帰る道ないぞ 日本 内田吐夢監督 183分 原作水上勉 昭和22年、北海道の町で質屋一家が惨殺され、大金が盗まれ、放火された。犯人は網走刑務所から出所してきた2人の男だったが、犬飼はたまたま知り合ったその男たちと台風で青函連絡船が…

はなれ瞽女おりん 1977年

野ざらしをこゝろに風のしむ身かな(芭蕉) 日本 篠田正浩監督、原作水上勉 撮影宮川一夫 「盲目の女が一人で生きるには按摩か女郎か、瞽女になるしかなかった」 天涯孤独で盲目の6歳の少女おりんを富山の薬売りが、盲目の女芸人たちが暮らす越後高田の瞽女…

浮雲 1955年

花のいのちはみじかくて 日本、成瀬己喜男監督 昭和21年初冬、幸田ゆき子はベトナムから荒廃した日本に帰ってきた。 タイピストだったゆき子は戦時下のベトナムで農林省技師の富岡と愛人関係だった。 東京の富岡の家を訪ねると富岡の妻が現れた。ゆき子は…

真夜中まで 2001年

映画とジャズを愛する和田誠が亡くなった 2001年、日本、和田誠監督 銀座の夜、ライブハウスでジャズ演奏をするトランぺッターの守山、曲はセロニアス・モンクの名曲「ラウンド・ミッドナイト」ミッドナイトはしずかに過去をふり返る時間。スコッチより…

宮本武蔵 般若坂の決斗

「宮本武蔵」5部作の2作目 1962年、日本、内田吐夢監督 沢庵和尚によって白鷺城の天守閣に幽閉された武蔵(たけぞう)は、3年間そこで万巻の書物を読み、人間的に成長した。名前を宮本武蔵(むさし)と改め、剣の奥義を究めるために修行の旅にでる。 …