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映画に関する短いエッセイとその他

アムール、愛の法廷

アムール、愛の法廷

2017年、フランス、クリスチャン・ヴァンサン監督

「10年判事」と言われ10年以上の刑罰を科すと噂される厳格な裁判長ミシェル・ラシーヌは「乳児殺害事件」の陪審員たちの中に入院中に世話になった女医ディットがいることに驚く。

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閉廷後、二人はカフェで待ち合わせをする。ミシェルは入院中にディットに手を握られていたことを愛だと思っていた。しかしディットは不安を取り除くために患者の手を握っていただけなのだ。

ミシェルがそれを知っても恋心とは不思議なもので、人を優しく人間らしい感情で包み込む。厳格な裁判長ミシェルの心の中に熱い思いが押し寄せてきて人間らしさを取り戻してゆく。

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しかしこの映画はやはり法廷劇だと思った。一体、だれが乳児を殺したのか、様々な証言から犯人は何となくわかってくるが、裁判はミステリータッチで事件の核心に迫っていく。

イタリア、アラブ、デンマークなど陪審員たちの出身も様々で、価値観も違い、控室やカフェで議論をするシーンや陪審員制度もフランス文化を感じさせた。しかも厳しい裁判劇のなかにも男女の愛だけはきっちりと描かれていた。

「熟年の淡い恋」と「法廷劇」2つの物語が巧みに絡み合いながら描かれる。裁判の適度な緊張感もあり、ほんのりとする上質の大人のラブストーリーだった。