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映画に関する短いエッセイとその他

アスファルト・ジャングル

アスファルト・ジャングル

1950年、アメリカ、モノクロ、ジョン・ヒューストン監督

出所してきた初老の知能犯ドックは宝石泥棒をノミ屋のコビーにもちかける。弁護士エメリッヒ、私立探偵ブラノン、金庫破りのルイ、運転手のガス、用心棒のディックスが加わる。

犯行に関与したこの7人の男たちは一気に破滅に向かってゆく。その破滅していく様子がじつに男性的でそれに魅了されてしまう映画だった。

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登場人物たちの個性がくっきりとしていた。主役のディックスは競馬狂いでケチな強盗を繰り返す荒っぽい男だった。探偵ブラノンとの一瞬の銃撃戦は西部劇の決闘を思わせ、鳥肌がたつほど見事だった。

ディックスの子供時代、一家は広大な土地を所有していた。ところがいつしか落ちぶれてしまう。ディックスは子馬を売ったことでツキに見放されて何もかも失ったと信じていた。もう一度、土地と子馬を買い戻すことが夢だった。金庫破りでやっとそれが叶うのだ。

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もっとも魅力的なのは冷静沈着なドックで「犯罪とは人間の裏側があらわれだけにすぎない」「悪事に大小はない」と自分の犯罪哲学を持っていた。

そんな彼が逃亡中にジュークボックスの曲に合わせて無心に踊る少女に見とれてしまい警官に逮捕される。少女の若さと生きていることを思う存分楽しむ姿に、ドックは自分が失ったものを知るのだった。

脇役でマリリン・モンローが華をそえているのも嬉しい。

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ヒューストン監督の力強い演出とモノクロ映像の構図の見事さと、そして哀しみのラストシーンに胸打たれる映画だった。スリリングでサスペンスフル、そしてドラマチックなアメリカ犯罪映画の傑作だった。