自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

病(やまい)短編小説集

石井久郎監訳「病(やまい)短編小説集」

「病気」を題材にした短編ばかりを集めたユニークな短編集で書き手がなかなか豪華。

 サマセット・モーム結核」、コナン・ドイル「梅毒」、O・ヘンリー「神経衰弱」、ジャック・ロンドンハンセン病」、スコット・フィッツジェラルド「不眠」、ジョン・アップダイク「皮膚病」・・「癌」「鬱」「心臓病」についての短編もある。

なぜかヘミングウェイだけは「梅毒」と「不眠」の2編が収められている。

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ヘミングウェイの一生は病気と怪我のオンパレードだった。

左目の生まれつきの障害、戦場での負傷、落馬で顔が歪み、自動車事故で複雑骨折、気管支炎、赤痢、肝機能障害、視覚障害言語障害、記憶障害、勃起障害、丹毒で失明の危機、高血圧による耳鳴りや頭痛、左耳の難聴、二重視、晩年はうつ病、神経衰弱、不眠や糖尿病・・電気ショック療法もうけたが、その翌年自殺している。

心臓病を題材にしたケイト・ショパンの掌編「一時間の物語」はショートコントのようだった。

マラード夫人が心臓を患っているのは誰もが知っていた。夫が死んだことを夫人に知らせるのにひどく気をつかったのはそのせいだ。知らせを伝えたのは妹のジョゼフィンだった。マラード夫人はわっと泣き出し、ひどく取り乱して妹の腕に倒れ込んだ。彼女は自分の部屋に一人で入って行った。唇からささやくように言葉が漏れ出てきた・・「自由、自由、自由!」

ところが死んだはずの夫が戻ってきた。心臓の悪い夫人は・・・。