ロンドンで小さなカメラ店を営む、年金生活者のトニー、妻とは別れ、36歳の娘は出産間近でシングルマザーになろうとしていた。平穏に暮らすトニーのもとに弁護士から一通の手紙が届く。それは40年前の初恋の人ベロニカの母親が亡くなり遺品を残したという。遺品は学生時代の親友で自殺したエイドリアンの日記だった。
ところがベロニカはその日記をトニーに渡そうとはしなかった。エイドリアンの日記をなぜベロニカの母親が持ち、ベロニカはそれをなぜトニーに渡そうとしないのか。トニーはその謎を解き明かそうと、40年ぶりにベロニカと再会する。
ベロニカは日記の代わりに学生時代にトニーが書いた忌まわしい手紙を返す。その手紙を読んでいくうちにトニーに過去の記憶が蘇ってきた。やがて思いもよらなかった事実が明らかになる。
人は過去を装飾し自分に都合よく編集する。長生きしているとその過去の記憶に異をとなえる人もいなくなり、事実というより物語になる。そうやって嫌な過去を清算して、自分の人生は幸せだったと思い込もうとする。それは自分の人生を肯定する自己防衛本能かもしれない。
いつか明かされる謎、永遠に明かされない謎、人生は小さな謎に満ちあふれている。謎のある人生もミステリアスな映画もどこか魅力的だ。