キャサリン・アン・ポーター「クリスマス・ストーリー」
「クリスマス・ストーリー」をすこしコンパクトにまとめてみた。クリスマスの雰囲気を味わってほしい。
私は初めからサンタクロースが好きではなかった。イエスの誕生日の祝祭からイエスを締め出しかねないバカ騒ぎに納得がいかなかった。
5歳の姪から一ドルを持っているので母へのクリスマス・プレゼントを買いに連れていってほしいと言われた。しばらくしてやっと予算に見合ったプレゼントを見つけた。
5歳の姪は「包装してもらってツリーにつるし、サンタクロースからの贈り物だと言いましょうよ」と私に言った。
店頭にずらりと並んだ赤いフランネルの上着を着、つけ鬚をしたサンタクロースたちに姪は素っ気ない態度だった。その様子を見て私は「あなたはもうサンタクロースを信じていないんでしょう?」とたずねた。
「ええ、信じてないわ」と姪は天真爛漫に言った。「でもお母さんには言わないでね。だってお母さんはまだ信じているんですもの」
幼い姪は自分が信じていないことを知らせ、母の幻想を乱すことを望んでいなかった。このことを決意したその瞬間に、姪の幼年時代は永遠に消え去ってしまった。人の気持ちを思いやるという姪の優れた素質が芽を吹きはじめた。
わたしと姪は甘い香りの漂う、明るいクリスマスの黄昏の中を歩いて行った。
幼虫が脱皮して蝶になるような短編だった。