自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ひかりのまち

ひかりのまち

1999年、イギリス、マイケル・ウィンターボトム監督 

27歳のナディアは3人姉妹で弟が一人いた。姉のデビーは美容師で離婚して小学生の息子を育てている。でも気ままに男漁りを続ける日々だった。妹のモリーは出産間近だったが、夫は仕事を辞めてしまう。弟は他人のアラばかりをさがす母親を嫌って家出している。

父親は年金暮らしで無気力に毎日を送っていたので母親とは険悪な仲だった。ナディアは伝言ダイヤルで恋人探しをしながら、男たちとの出会いと別れを繰り返していた。

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ナディアは伝言ダイヤルで知り合った男と一夜を共にする。ひとりバスで帰る途中、孤独と愛のないセックスで自分が惨めになり涙があふれ、何もかもが滲んで見える。バスの外ではいつまでも雨が降っている。

ところがナディアはまったく気づかなかったが、ひそかに彼女を愛する男がいた。

モリーは女の子を出産して「不思議の国の」アリスという名前を付ける。父親が家に帰ると家出している息子からの留守電が入っている。「元気でやっている、じゃあね」

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夜になるとネオンや街灯やさまざまな店の灯りが明るく輝いている「ひかりのまち」ロンドン、家々にはあたたかな明かりがともり、だれもが愛されて幸せそうに見える。

そんなロンドンの金曜日から始まる3日間の物語。

マイケル・ナイマンの音楽が情感たっぷりで映画の感動を盛りあげていた。思い通りにならない人生を丁寧に包み込む映画だった。何かが解決したわけではないが、最後にはそれぞれの人たちにほのかな灯りが見えてくる。小品ながらも私の好きな映画だ。