ジーナ・ローランズのカッコよさ
1980年、アメリカ、ジョン・カサヴェテス監督
ギャングの会計係が金を横領して取引の情報を手帳に残していた。ギャングの殺し屋たちが会計係の一家を皆殺しにするが、6歳の息子フィルは同じアパートに住むグロリアがかくまっていた。フィルは父親から手帳を預かっていた。ギャングに追われて二人の逃避行が始まる。
二人は何度もタクシー、地下鉄を乗り換えてギャングの眼をくらます。スカート、ハイヒール、そしてトランクを抱えながら逃げ回るグロリアの姿がなぜかカッコいい。
グロリアの放った銃弾が後戻りできない状況をつくりだす。まとわりついてくるフィルを見捨てようとするが出来なくて、グロリアはヤケクソだと腹を決める。グロリアはギャングのボスの元情婦であばずれ女だった。
やがてグロリアの本性があらわれてくる。煙草をくわえ、男勝りの啖呵をきり、ためらわず銃を撃ち、ギャングたちを挑発する、 タフで気風が良くて何よりもカッコいい。この映画は乾いているが乾ききってはいない。それがハードボイルドなのだ。そしてラストシーンの金髪の鮮やかさ。
舗道にたむろするスパニッシュ、地下鉄の混雑するホーム、車両の落書き、褐色のビルディング、街角の人たち、ジャズの似合う街ニューヨークをロングショットで切り取ったドキュメンタリー映画でもある。
「ニューヨーク・インディーズの父」ジョン・カサヴェテス監督のヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞の傑作。