ポジからネガへの反転
2010年、日本、行定勲監督
東京、ルームシェアをする男女4人、映画会社に勤める28歳の直輝、21歳の大学生良介、23歳の無職琴美、24歳のイラストレーター兼雑貨屋店長の未来。そこに18歳の男娼サトルが加わって5人になる。近くで起こっている残虐な連続女性暴行事件が連日、テレビで報道されている。
「この部屋はチャットか掲示板のようなもの、居心地が良ければいたらいいし、嫌になればでていけばいい、自由な空間よ」「上辺だけの付き合いだが、それが楽しい」
煩わしい人間関係は苦手で、かといって孤独になるのは怖い、そんな5人の共同生活。
5人は毎日がお祭りかパレードのように愉快に暮らしていた。まさか5人が心に闇を抱えているとは見えなかった。
ルームメイトの一人が連続女性暴行犯だった。それでも他の4人は何事もなかったかのように、今まで通り旅行に出かける相談をする。4人は自分たちの異常性に気づいていなかったのだ。その事にいちばん驚いたのは暴行犯自身だった。俺だけじゃなく奴らもどこか狂っている。
無表情で仮面のような彼らの本当の顔が映し出されたとき、突如として世界が陽画(ポジ)から陰画(ネガ)に反転したような気がした。この見事なエンディングには痺れるような痛みがはしった。薄い狂気が彼らを覆っていた。
全編にもうすこし緊張感があればもっといい映画になっただろう。