自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

たたり 1963年

恐怖は人類最古の感情かもしれない

1963年、モノクロ、アメリカ、ロバート・ワイズ監督

原作はシャーリー・ジャクソンの小説「丘の家の怪」(山荘綺談)

1999年に「ホーンティング」というタイトルでリメイクされている。

 ニューイングランドの郊外の巨大な館(丘の家)は幽霊屋敷と呼ばれている。90年前から家族や使用人の不審な死がつづいている。両親が亡くなった幼い娘は老婆になるまで外に出ることなく保育室で過ごした。今はだれも住むものがなく、夜になると近隣の人たちはだれも近づかない呪われた館だった。

超自然現象を研究するマークウェイ博士が霊感の強い女性エレナーと透視力のあるセオドーラ、そして館の相続人の青年ルークと超自然現象の解明に乗り出す。

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怖さとグロテスクさを映像で表現する最近のホラー映画とは違って、古典的、文学的で格調高い恐怖映画だった。不気味な怪物や幽霊が 出てくることはなく、見えない霊魂が人の心の奥深くに潜んでいる恐怖をかきたてるだけだった。

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幽霊屋敷は呼吸をしていた。生きながら邪悪な魂をもっていた。それに呼応するのは霊感の鋭いエレナーだけだった。幽霊屋敷はエレナーの心の隙をついて憑依した。 そしてエレナーもまたそれに魅入られて、屋敷と一体化することに喜びを見出した。彼女に恐怖と恍惚が同時にもたらされる。

 

孤独なエレナーを邪悪な幽霊屋敷が呑み込んでゆく。恐怖譚でありながら恐怖よりも哀切感のほうが強い映画だった。