自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ブラインド・マッサージ 2014年

生まれてみたけれど何も見えない

2014年、中国、フランス、ロウ・イエ監督

 南京にはネオン華やか夜と風俗店があり、風俗嬢も借金を取り立てるヤクザもいた。これが中国の「現在」かもしれない。

南京のマッサージ治療院で働く盲目の男女マッサージ師たちの恋愛模様を描いた群像劇。

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芸術作でも娯楽作でも社会派でも感動作でもドキュメンタリーでもなく、重苦しい作品でもないが、ある意味、衝撃的な映画だと言えるだろう。しかも視覚障害者たちの物語でありながら、彼らはこの映画を観ることができない。ただ音声から想像するだけだ。

 

抑えきれない性の欲望、人との肉体的な接触、失われた視覚への苛立ち、自分一人では生きることができない不安、「美」というものを見る事ができないもどかしさ、そして彼らの涙の理由はみんな違うけど泣きたい気持ちは同じだった。でも「生と性」への執着は健常者と変わらなかった。

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先天的に全盲の人、子供の頃に視力を失った人、徐々に視力を失いつつある人、などそれぞれの境遇は違っていた。彼らに利害や妬みや諍いはあるが、障害者としてお互いに助けあう気持ちだけはもっていた。しかし彼らの暮らしは不安定なものだった。

 

盲目のマッサージ師たちの姿を見ていると「わずかばかりの運の悪さを 恨んだりして」いる自分がすこしばかり恥ずかしくなる。