自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

迫り来る嵐 2017年

この雨はいつ降りやむのだろう

中国、ドン・ユエ監督

物語は2008年、一人の男が出所してくるシーンから始まり、男が11年前の1997年の出来事を回想し、そして記録的な大寒波が中国を襲う2008年で終わる。 

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1997年、中国のちいさな町、国営の製鋼所の警備員として働くユイは、「名探偵ユイ」とおだてられていて、自分でもその気でいた。彼は近くで起こった若い女性を狙った連続猟奇殺人事件に関わっているうちに、いつしか事件にのめり込んでゆく。やがてユイは恋人のイェンズをおとりにして犯人を捕まえようとする。

その事を知ったイェンズは生きる気力をなくしてしまう。やがてユイは犯人を憎むあまり、取り返しのつかない間違いを犯し、それが悲劇を生んでゆく。

 

コメディタッチで始まったが、徐々に重苦しくサスペンスたっぷりにストーリーは展開してゆく。後半に行くにしたがってミステリータッチになり、物語に引きこまれてゆく。

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全編にわたって激しい雨がふっている。映像は夕暮れのようにいつも薄暗い。降りやまない雨がこの映画を一段と陰鬱ものにしていた。どうしてこんなに暗いのだろう。

 工場での模範社員の華やかな表彰式や大量解雇や工場の閉鎖など、中国の経済発展の様子が伝わってくる。一人の男の物語にすぎないのに映画は否応なく中国社会の変化を映し出していく。

 

誰もユイの輝かしい過去を知らず、彼に残されたものは身分証明書一枚だけだった。明るい未来などどこにもなかった。

迫り来る嵐のなか、これからユイはどのように生きてゆくのか。そして中国はどこへ向かおうとしているのか。