自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

小さな映画館が似合う港町

ノスタルジー神戸

 1995年1月17日の阪神・淡路大震災の3日後、被害の少なかった私は神戸に向かった。芦屋、御影、三宮の惨状はまるで映画の戦災後のようで信じられない光景だった。多くのビルが倒壊して、その臨場感はテレビの映像とはまるっきり違いその凄まじさに唖然とした。

人のいない街並みは異様な静けさで、文明の終焉を思わせた。しかしその記憶も今は薄れてきている。

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震災後、神戸を訪れることは少なくなったが、学生時代から神戸は思い出深い街だった。

海と山に囲まれ、カフェの珈琲が美味しく、女性が洗練されて美しく、小さなバーでジャズライブがあり、しかも日本で最初に活動写真が上映された町だという。

 

2014年、神戸市立博物館の「ボストン美術館 浮世絵名品展 北斎」を鑑賞後、明治の情緒が残る旧居留地界隈を散策、メリケン波止場神戸ポートタワー、中突堤南京町、そして遅めの昼食は元町の老舗(創業130年)のトンカツ屋だった。

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新開地、湊川公園の下にはパルシネマがあった。ここでリドリー・スコット監督「テルマ&ルイーズ」に堪能し、三宮近くのアサヒシネマではホウ・シャオシェン監督「恋恋風塵」に心揺さぶられた。

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今はもうないが、村上春樹もよく通ったという二本立て低料金の「ビック映劇」は私のお気に入りだった。ここでゲストに淀川長治さんを迎えた映画会があり「未知との遭遇」が上映された後、ショートケーキが出された。

淀川さんも神戸に生まれ、当時、映画館や芝居小屋の立ち並ぶ新開地で映画に夢中になったと話していた。

 かつてラジオの女性DJがこう言った「ちいさな映画館が似合う町、それが神戸」