自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

マイ・ブックショップ 2017年

いつか読書する日がくる

スペイン、イギリス、ドイツ、イザベル・コイシェ監督

 1959年、イギリスの海岸沿いの田舎町、戦争未亡人のフローレンスはこの町で書店を開こうとする。町の有力者ガマート夫人は書店を開く事に反対で法律によってフローレンスを追い出そうとする。ガマート夫人に逆らう者のいない保守的な町だった。

40年も引きこもり本を読むことが生き甲斐の老人ブランディッシュと書店を手伝う少女クリスティーンだけがフローレンスの味方だった。

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引きこもりだったブランディッシュアフタヌーンティーにフローレンスを招待する。二人はゆったりとした優雅な時を過ごし、好きな本の話をしながらお互いに惹かれ合ってゆく。イギリスの田舎町の古い建物や美しい自然風景が心に沁みてくる。

 

ブランディッシュは意味のあるものだけが必要だというかのように、本の表紙を破り、暖炉で燃やしてしまう。

ところがフローレンスは本の装丁をまるで宝飾品ように愛おしそうに見つめ、指で優しく撫で、ページをぱらぱらとめくる。

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フランス映画「読書する女」は本を読んで聴かせることを職業にした女の物語だった。「マイ・ブックショップ」は読書の歓びを伝えたいために書店を開いた女の物語だった。読書の好きな二人の女はなぜかファッショナブルだった。

 

映画は女性のナレーションで始まり、静かに物語が展開してゆく。この女性の正体がラストシーンになって分かると私たちは軽い衝撃をうける。その時、一冊の小説を読み終えたような満足感に浸ることが出来る。