自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

愚かで愛すべき男たち

2005年、アメリカ、フランス トミー・リー・ジョーンズ監督

 メキシコとの国境近くの退屈な田舎町、国境警備隊員のマイクは誤ってメキシコ人のメルキアデスを射殺して、すぐに死体を埋めるがコヨーテがその死体を食い荒らして、発見されてしまう。マイクは警備隊員だったので事件はもみ消されそうになる。

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ルキアデスの親友ピートは犯人を探し始める。以前、ピートはメルキアデスに「俺が死んだら家族の元に連れて行って、故郷の美しい村ヒメネスに埋めてくれ、」と頼まれていた。メルキアデスは5年も会っていない妻と息子と二人の娘の写真を嬉しそうに見せる。

 ピートは約束を果たすために死体を掘り起こし、犯人のマイクを拉致して険しい渓谷の道をすすみ、メキシコの村ヒメネスに向かう。しかし保安官たちが追ってくる。

 

親切なメキシコ人の労働者たち、「わしを殺してくれ」という一人暮らしの盲目の老人、密入国の案内人、薬草使いのメキシコ女・・・旅の途中で様々な人たちと出会ってゆくうちに利己的だったマイクが徐々に変わってゆく。

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ところが死体はだんだん腐りだし、死臭が強くなり、黒ずんだ異様な顔になってくる。夜になると蟻が顔を食い始める。顔にアルコールをかけ火をつけて蟻を焼く。腐敗を防ぐために死体に不凍液を飲ます。

ピートは男としての約束を守り、メルキアデスを故郷の村に埋葬しようとする。

 やっとのことでピートとマイクが目的地にたどり着いたとき、思いもかけない真実が明らかになる。ピートとマイクは茫然となる。

 

男の孤独と友情、女の倦怠、国境、不法就労者、生きる哀しみ、家族・・・・

俳優トミー・リー・ジョーンズの初監督作品で、いきなりのカンヌ国際映画祭男優賞、脚本賞受賞の名作。