エルヴィスは建物をでた
フランス ミカエル・アース監督
パリでアパート管理人の仕事をしている24歳の青年ダヴィッドは恋人レナと楽しい日々を送っていた。ある日、姉のサンドリーヌがテロ事件に巻き込まれて死んでしまう。彼女には7歳になる娘アマンダがいた。
突然、最愛の姉を亡くしたダヴィッドは姪のアマンダの面倒をみることになる。母を亡くしたアマンダも心に深い傷をおっていた。お互いにどうしていいか分からない状態で一緒に暮らし始める。
ある日、ダヴィッドがもういらないだろうと思ってサンドリーヌの歯ブラシを捨てると、アマンダは「人の家のことを勝手に決めないで」と怒る。
テロ事件で負傷していた恋人のレナはPTSDで故郷に帰ることになる。レナは「あなたを励ましてくれる人が必要よ」とダヴィッドに言い残して去ってゆく。
ダヴィッドはイギリスに住む20年前に別れたきりの母に会う。アマンダにとっては初めて会う祖母だった。
映画の冒頭、英語教師のサンドリーヌはアマンダに「Elvis has left the buildingエルヴィスは建物を出た」の本当の意味を教える。それはいつまでも帰らないプレスリーファンに係員が言った言葉で、「もう終わりだ」という意味だった。
ダヴィッドとアマンダはウィンブルドンでテニス観戦をする。スコアが「0―40」になったとき、アマンダは急に泣き出す。母を亡くした悲しみとこれから先の不安から自分は「Elvis has left the buildingもう終わりだ」
ところが試合はデュース「40-40」になった。ダヴィッドは「ほら、まだ終わりじゃない」
凄いというタイプの映画ではないが、思いもかけないゆるい直球をど真ん中に投げ込まれ、ストライクを取られた、そんな気分になる映画だった。