自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

はなれ瞽女おりん 1977年

 

ざらしこゝろに風のしむ身かな(芭蕉

日本 篠田正浩監督、原作水上勉 撮影宮川一夫

 「盲目の女が一人で生きるには按摩か女郎か、瞽女になるしかなかった」

 

天涯孤独で盲目の6歳の少女おりんを富山の薬売りが、盲目の女芸人たちが暮らす越後高田の瞽女屋敷に連れてゆく。三味線と唄を習い旅芸人として生きてゆく宿命だった。12歳の時、おりんは初潮を迎える。その後は神様の妻になり男と関係を持つことが許されない。

しかし美しく成長したおりんは男たちの誘惑に身を任せてしまう。掟を破ったおりんは「はなれ瞽女」として一人で旅に出る。やがて温もりを求めて男から男へと渡り歩いてゆく。

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阿弥陀堂で大男の平太郎と知り合い、おりんは自分の身の上を話す。平太郎はおりんを大八車に乗せて二人で旅をつづけるが、仏様のようだと言っておりんを抱かなかった。二人にとって初めての幸せな旅だった。

 

シベリア出兵や米騒動や飢饉で国民は苦しんでいた時代(1918年~1922年)。平太郎は脱走兵で憲兵隊が若狭の小浜まで追ってきた。

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伝統の祭り、田舎町の旅籠、田舎芝居、座敷芸、旅芸人、地蔵堂観音堂六地蔵、貧しい村、石畳の道、北陸の四季折々の風景、海辺を歩く二人、深い山中、香具師、万歳師、善光寺薬師寺、一面の雪景色・・・ここには日本の原風景がある。大正初期の日本を巡る抒情的な「ロードムービー」ともいえるだろう。

だけど家も家族もない盲目の女の一人旅、どれほど不安だったろう。

 

岩下志麻原田芳雄奈良岡朋子樹木希林西田敏行小林薫・・・だれもが驚くほど若い。それだけでも充分、一見の価値がある。