自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

僕たちは希望という名の列車に乗った

沈黙する教室

2018年、ドイツ ラース・クラウメ監督

 

1956年、「ベルリンの壁」ができる5年前、東ドイツスターリンシュタット、18歳の高校生テオとクルトは、西ドイツの映画館でソ連に対して自由を求めたハンガリーの民衆蜂起のニュース映像をみる。

政治的な考えはあまりなく、その犠牲者を悼むために二人はクラスメイト達に呼び掛けて授業中に2分間の黙とうをする。しかし東ドイツソ連の影響下にあり、この行為は社会主義国家への反逆をみなされ、彼らは厳しい立場に追い込まれる。

f:id:hnhisa24:20200407091619j:plain

ファシズムの国から社会主義国に移行した東ドイツ、当時、西ドイツにあって東ドイツになかったもの、それは「自由」だった。社会主義国家建設のために国家権力は強くならざるをえなかった。大人と違って若者にとって自由はとても魅力あるもので、新しい文化や芸術を生み出すためには自由が必要だった。

 

クラスメイトのエリックは亡くなった父親が赤色戦線の闘士で反ナチの英雄だったという事に誇りを持っていたが、実はナチに寝返り、そのために裏切り者として処刑されていた。エリックはその真実を隠していた母親と義理の父親を激しく責める。

当然のことながら戦争を経験した親世代は平穏な暮らしを望んでいた。 

f:id:hnhisa24:20200407091708j:plain

西ドイツのラジオ放送を聴く老人は「自分の考えにそって行動すると国家の敵になる」と高校生たちに忠告する。でも高校生たちは自分で考え始め、密告、友情、恋、父との葛藤などの出来事を乗り越え、ある驚くべき決断をする。

 

高所に張られたロープの上を綱渡りしているような映画で、エンターテイメントとしても充分に楽しめる作品だった。