自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

街角 桃色の店 1940年

人情喜劇の香りもする

アメリカ、エルンスト・ルビッチ監督

原作はハンガリーの劇作家ミクローシュ・ラースローの戯曲

 ハンガリーブダペスト、街角の雑貨店マトチェック商会、そこの優秀な主任であるクラリックは見知らぬ女性と文通をしていた。仕事を求めて若い女性クララがやってくる。6人も店員がいたので断るが、経営者のマトチェックが彼女を店員として雇う。しかしクラリックとクララはいつも喧嘩ばかりしていた。

 

マトチェックは妻がクラリックと密会していると誤解して彼を解雇してしまう。ところが興信所が調べると別人だったことが分かり、クラリックは店長として復帰してくる。

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98年にトム・ハンクスメグ・ライアン主演「ユー・ガット・メール」としてリメイクされたが、ストーリーは大きく違う。ただ私書箱での文通とパソコンのメールの違いはあるが、同じような見知らぬ男女のラブロマンスだった。

 

カフェでの待ち合わせのシーンもよく似ていた。ここでも二人は嫌みの応酬をする。

クラリックが「君みたいな小姑のような女性に、男は寄りつかないよ」と言えば、クララは雑貨一筋のクラリックを皮肉って「あなたは心の代わりにハンドバック、魂の代わりにスーツケース、 知性の代わりはライターよ不良品のね」と言い返す。

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ちなみにカフェでクララは「アンナ・カレーニナ」を読んでいたが、「ユー・ガット・メール」では「高慢と偏見」だったのが面白い。

 

雪の降るクリスマスイブの夜、一人きりの経営者マトチェックは店員たちを食事に誘うが、だれもが家族の元に帰っていった。ところが新米で使い走りのルディだけが一人で寂しいクリスマスを迎えようとしていた。食事に誘うとルディはとても喜び、二人は仲良く高級レストランに向かう。秀逸なシーンだった。

 

雑貨店を舞台にした小さな物語だが、思わず笑いを漏らしてしまう台詞と演出でほんのりとしたロマンチック・コメディに仕上がっていた。