自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

特別な一日 1977年

ソフィア・ローレンとマストロヤンニの二人芝居

イタリア、エットレ・スコーラ監督

1938年、ヒトラー総統がイタリアを訪問した。当時のニュース映像が延々と映し出される。翌日、ムッソリーニファシスト党はローマで歓迎式典を開く。その様子がラジオで放送され、それが映画の背景に流れる。

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低所得者向けの集合住宅に住む主婦のアントニエッテには6人の子どもがいた。夫はファシズムの信奉者だった。子どもたちと夫は式典に参加して、家にはアントニエッテだけが残り、後片付けなどの家事をしていた。

九官鳥が逃げ出し向かい側の部屋の階段に止まった。アントニエッテがその部屋を訪ねると、その部屋に住むガブリエレがあらわれる、ラジオのアナウンサーだったガブリエレは同性愛者だった。

「夫でも父でも兵士でもない男は男ではない」それが「正義」だった時代、その日は彼が連行されていく日で、トランクに荷物をつめていた。

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アントニエッテは夫から子どもを産む機械、家政婦と軽く見られていた。彼女はろくに学校に行ったこともなくて無教養だという事を恥じていた。だから夫が教養のある女教師と浮気をしている事が許せなかった。

 

「婚約以来、二人で笑ったことはない。夫は外で笑っている」愛情のない生活だった。彼女はガブリエレから贈られた「三銃士」の本を手に取る。でも本を読むのをやめて夫に言われるままベッドに向かい、忍従の日々に戻る。一方、ガブリエレは官憲に連行されて、サルディーニャ島に流刑になる。

 

1938年5月4日はイタリアにとってもアントニエッテとガブリエレにとっても「特別な一日」だった。たった一日の物語だったが、完成度の高い「特別な映画」だ。