自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

野いちご 1957年

「人との接触を断つ日々」にこの映画はどうだろう

スウェーデン イングマール・ベルイマン監督

 78歳の医師イーサク・ボルイの独白と悪夢で映画は始まる。「人との交流を意図的にさけてきた。だから年老いた今は孤独だ」

死が近づいてきたとき、人は過去を思い出す。過ちと後悔が奇妙な悪夢となってイーサクを悩ませる。生きてきた意味はどこにあるのだろう。

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50年も医学に貢献してきたイーサクは名誉博士号をうける記念式典に出席するために車でルンドに向かう。同行するのは息子エーヴァルドの妻マリアンだった。息子夫婦は離婚寸前だった。ルンドまで14時間の旅。途中でイタリアに行くという若者3人と、憎しみ合っている中年夫婦を同乗させる。

マリアンとイーサクの車中での会話「夫はあなたを尊敬しているが憎んでもいる、お父さまはエゴイストですわ」「あなたが私を嫌っているのは残念だ」「嫌ってなんかいません、哀れなの」・・沈黙。

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医師としてイーサクが初めて開業した町にやってきた。ガソリンスタンドの店主「この辺では皆いまでも先生のお噂をします。世界一いい先生だって」そしてガソリン代を受け取らなかった。マリアンは微笑む。

一人で住む96歳の母親に会いにゆく。マリアンはこの母親をじっと見つめる。そして「冷酷さと孤独、死ぬよりも恐ろしいことだわ、生きながらの死人」と思う。

 

医学に貢献したイーサクを表彰する荘厳な記念式典、シルクハットを被ったイーサクはゆったりと行進する。誰もがイーサクの人生が意味あるものだったと知る。

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式典後のホテルでイーサクは「一緒に旅行してくれてありがとう」とマリアンに礼を言う。「私こそ・・」「マリアン、君が好きだよ」「私もお父さまが好き」

その夜、イーサクはまた夢をみる。しかしそれは悪夢ではなかった。幸せな子どもの頃の夢だった。

人生は野いちご、甘酸っぱい味がする。