自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

木を植えた男 1987年

絵を描き続ける男

カナダ、フレドリック・バック監督 30分

「私」と名乗る若い男が語り手となってこの物語は始まる。

1913年、南フランスの山岳地方、寒々とした荒れ果てた土地を「私」は歩いていく。その荒れ果てた土地に住む人々は生活の苦しさから心も荒んでいた。

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「私」はそこで妻と子供を亡くした55歳の羊飼いブフィエの家に泊めてもらう。彼は3年前から荒れた土地やはげ山にどんぐりの実を植え続け、いままでに10万本植えたという。来る日も来る日も植え続けるのだった。

5年後、第一次大戦が終わり、「私」が再び訪れると多くのブナの木が育っていた。その後、ブフィエは第二次大戦中もただただ植え続けた。

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いつしか生き物が甦り動物が集まり、植物が息を吹き返してきた。やがて荒れ果てた土地に木々が繁り、小川が流れ、虫や鳥が戻ってきた。山々は緑に覆われ土地は肥沃になり、豊富な清流が湧き出してきた。

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そして多くの家族が住みつくようになり、人々は豊かに幸せに暮らし始める。人々は自然に森が甦ったと思っていた。まさか一人の男が30年をかけて荒れ果てた土地を緑あふれた土地に変えたとは誰も思わなかった。

ブフィエがしたのは黙々と木を植え続けただけだった。

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1947年、ブフィエは87歳のとき養老院でひっそりとその生涯を閉じた。彼のことを誰も知らなかった。

 

この映画のすごいところは実話と思わせる事だ。じつはフランスの作家ジャン・ジオノの短編が原作。

何よりも魅力的なのはフレドリック・バックが色鉛筆で描いたというパステル調の2万枚の原画で、素朴でどこかアートを思わせた。黙々と木を植え続けたブフィエと黙々と絵を描き続けたバックの姿が重なってくる。