原題は「かわいいイルマ」
パリの中央市場近くのカサノバ通り、そこは娼婦街だった。何人もの娼婦たちが客待ちで街路に立っている。そのなかにプードルを連れたイルマがいた。娼婦たちのヒモが酒場にたむろしていた。警察は賄賂をとって売春を見逃していた。
その町に新米でまじめなネスター巡査が赴任してくる。彼は娼婦たちを一斉検挙するが、その中に客として上司の警部がいた。その日のうちにネスターは警察をクビになってしまう。ところがいつの間にか彼はイルマのヒモになる。
でもイルマを働かせるのが嫌でイギリス紳士で富豪のX卿に変装してイルマの客になる。
犬を連れたイルマを見てX卿はこう言う「わしも犬を飼っている」「プードル?」「パスカヴィル家の犬」・・X卿が登場してから映画は俄然、面白くなってくる。
イルマに払うお金を稼ぐためにネスター(X卿)は夜明け前から中央市場で食肉運びなどをする。疲れ切って朝帰りをしているところをイルマに見られてしまう。
浮気を疑ったイルマはX卿と英国ウスターシャーの城に逃げようとする。嫉妬にかられたネスターはX卿を殺してセーヌ川に投げ込んでしまう??
ネスターの力になるのが酒場の口髭のマスターで、彼は弁護士であり、産婦人科医だった。かつてフランスでは最も有能な弁護士であり、シュバイツァーの元でも働いたと本人は言うが、とにかくわけのわからない男だった。
ワイルダー監督作品「アパートの鍵貸します」のようなペーソスはないが、映画ファンにはたまらない小ネタ満載の大人のおとぎ話。思わず笑ってしまう映画だ。そしてラストシーンも不思議で粋で洒落ている。