この国が失ったもの
1936年、ジョー・ウィルソンと婚約者のキャサリンは結婚資金をやっと貯める事ができて、ジョーはキャサリンの住む町まで車で出かける。
ところが途中で、誘拐犯と間違われ留置場に入れられてしまう。根拠のない噂が広がり、町の住民たちは制裁を叫び、ジョーをリンチしようとする。暴徒化した群衆は警察署を襲い、留置場に火をつけ、ダイナマイトを投げ込む。
憎しみをあらわにした女が火を放つ、暴徒化する群衆の顔、顔、顔、それは正義という仮面をかぶっていた。
暴動が終ってジョーが無実だと分かると、町の住民たちは事件を早く忘れようとする。神も赦してくれるはずと自分たちに言い聞かす。だれも罪の意識に苛まれることがなかった。
ところがジョーは奇跡的にも生きていた。激怒にかられたジョーは復讐を誓い、二人の弟に法律に訴えて町民たちを「殺人罪」で告発するように言う。
やがて22人の町民が殺人犯として裁判をうけることになるが、彼らは口裏を合わせて自分たちは現場にいなかったと主張する。しかし証拠の映像が残っていた。
地方検事は被告たちを追い詰めてゆくが、肝心の死体が見つからないので、殺人事件として立証するのが難しくなってくる。被告たちは無罪だと高をくくってほくそ笑む。
デマに煽り立てられる群衆の暴力とリンチという92分の小品だが、今の時代にも通じる緊張感がある。その上、法廷劇のサスペンスもあり、見応えのある映画だった。最後までジョーの激怒は収まらなかった。
彼は思う「この国が失ってしまったものは良心と誇りだ」