「世界は虐殺を忘れ、生存者だけが覚えている」
スペイン イザベル・コイシェ監督
少女の語りで映画は始まる。ハンナは工場に勤めていたが、無遅刻、無欠勤だったので上司から休暇をとるように言われる。仕方なくスペインを訪れるがハンナには何もすることがなかった。
陸から遠く離れた海上の油田採掘所で火傷を負い、一時的に目が見えなくなった男(ジョゼフ)を看護する仕事に就く。ハンナは心を閉ざし、難聴で秘密を抱えた女性だった。
ハンナが明かす「秘密のこと」のあまりの壮絶さにジョゼフは言葉を失ってしまう。映画はこの告白につきると言ってもいいだろう。
「秘密のこと」とはハンナがクロアチア紛争での拷問被害者だったことだった。心も身体も傷つけられた彼女はそれを自分のこととして話すことが出来ず、親友の出来事として話す。そして目の見えないジョセフが彼女の胸の酷い傷痕に触れた時、私たちもまた言葉を失ってしまう。
ラストシーン、ハンナは明るい家のキッチンにいる。窓の外では子どもたちがはしゃぎながら家に戻ってくる。ハンナは幸せそうだ。
そこに少女の言葉が聴こえてくる。「私はもういない。日曜だけたまに、彼女の夫と二人の子供たちがいないときにやってくる。ハンナがふいに虚無感に襲われるとき、全て夢じゃないかと思うような時・・私の弟たち。でも私はいま遠いところにいる。そしてもう戻らない」
この少女は一体誰なのだろか。どこか夢をみているような結末だった。
「何百万人の虐殺があり、生き延びた人間は生き延びたことを恥として生きている」
「愛」の物語でもあるが、とても重く、少しばかりの覚悟を持ってご覧になるほうがいいと思う。