自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

コールド・キラー 2017年

闘う女性の映画には爽快感がある

ドイツ、オーストリア、ステファン・ルツォヴィツキー監督

ルツォヴィッキー監督には「ヒトラーの贋札」という見事な作品がある。だから期待感をもって鑑賞した。

 

オーストリアからの移民女性エズゲはウィーンで夜はタクシードライバーとして働き、昼はムエタイのトレーニングに励んでいた。エズゲは寡黙で笑う事もなく、実に不愛想な女だった。過去、父親との間にわだかまりがあり不仲で実家にも寄り付かなかった。

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ある夜、部屋から娼婦が殺される現場を見てしまう。犯人は娼婦の皮を剥ぎ、口に高温の油を注いで殺すという残虐なイスラムの狂信的サイコキラーだった。

エズゲは警察に保護を求めるが彼女には前科があり取り合ってもらえなかった。そのうちにサイコキラーはエズゲと間違って従姉妹を殺してしまう。間違いに気づいたサイコキラーはやがてエズゲの命を執拗に狙ってくるが、エズゲは男勝りのムエタイで抵抗する。

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最近のヨーロッパ映画には不法移民やネオナチがよく登場する。移民がヨーロッパ社会にとっては深刻な問題になっている。そしてドイツ映画独特の深い陰影の映像がヨーロッパの二つの顔、豊かで明るい昼と闇に包まれ暗く沈んだ夜を表現していた。

 

この映画は移民問題を正面から取り上げたものではないが、それでも物語の背景には移民や老人介護といったヨーロッパの切実な悩みが描かれ、社会性をおびた異色のクライムサスペンスに仕上がっていた。移民という暗雲がヨーロッパを覆っている。

 日本未公開だったが意外と面白い映画で「拾い物」の一本だった。