自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

祇園囃子 1953年

千年の古都に生きる女たち

日本 溝口健二監督

田舎には美しい自然がある。町にはなにがあるのだろうか。町の魅力は路地だと思う。路地には人々の歓びや哀しみがあふれている。狭い路地をさまよっていると人の息吹を感じ、どこか懐かしい気分になる。

その路地からこの物語は始まる。

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京都、祇園の路地で16歳の娘栄子が売れっ子芸者の美代春の家を訪ね歩いていた。栄子はかつて芸者だった母を亡くし、父は商売に失敗し、中風で体が不自由になっていた。どこにも行くところがなかった。

舞妓になりたくて美代春を訪ねたのだ。特定の旦那をもっていなかった美代春は裕福ではなかったが話を聞いて栄子に三味線や踊りを仕込み、一人前の舞妓に育てあげようとする。

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一年後、素質のあった栄子は美代春の妹分、美代栄としてお座敷にでることになる。美代春はその着物や帯を用意するためにお茶屋の女将お君から多額の借金をする。そのために義理に縛られてお君の頼みを断れなくなり、二人はつらい状況に追い込まれる。

しかし美代春は思い切りよく「清濁併せ吞む」ことで道を切り開いてゆく。

 

身寄りのない美代春は同じ境遇の美代栄に「他人とは思っていない、親身に考えている」と話し、二人は姉妹のように生きてゆく。

 

祇園祭の日、二人は「よろしゅう、お頼み申します」と、周りの人に頭を下げながらお座敷に向かう。どこからともなく三味線、笛、太鼓、鉦の音が聴こえてくる。祇園囃子が二人を祝福しているようだ。

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今の時代からみれば何もかもが古臭く見えるかもしれないが、ここには今の時代にも通じる幸せを願いながら生きる女たちがいる。溝口監督の作品はいつも「大人の映画」の味わいを持っている。