ベルイマン監督作品「野いちご」冒頭の夢のシーン、主人公の老人が見知らぬ無人の町を歩いている。老人は馬車から落ちてきた棺桶の中に自分の死体を見て驚愕する。老人は死の恐怖で目が覚める。
私も無人の町を歩いている夢を見ることがたまにある。もちろん自分の死体を見る事はないが、そこは記憶の断片でつくられた架空の町並みであり、怖いというよりどこか懐かしい。
以前はよく見ていた飛翔する夢や墜落する夢はほとんど見なくなった。取り壊されて今はもうないが、私の育った実家の夢をみることがある。でもそこには父も母もいない。私一人が留守番をしている。しかもいつも夜なのだ。
私は不吉だと言われる極彩色の夢を一度だけみたことがある。
胃ガンだった友人が亡くなるすこし前に「自分が細胞になった夢をみた」と話したことがある。それは癌細胞だったのだろうか。もしかしたら予知夢だったのかもしれない。
私たちがみる最後の夢はどのようなものだろう。
ちなみに「野いちご」のラストシーン、老人がみたのは家族と暮らす幸せな子どもの頃の夢だった。そこに死の恐怖はなく、生の輝きがあった。