そして誰もいなくなった
ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン監督
アトリは妻に隠れて深夜ポルノビデオを見ていた。それは自分と昔の恋人のセックスビデオだった。それを妻に見つかり追い出され、アイスランドの閑静な住宅街に住む両親のもとに転がり込む。
母親は失踪した長男の自殺を認めることができず、精神にすこし異常をきたしていた。
その上、アトリの両親は隣家の夫婦と庭の木をめぐって対立していた。隣人は年の離れた中年夫婦で子供が欲しくて人工授精の治療を受けていた。どちらも悩みを抱え、大人の知恵がなく争いはだんだんエスカレートしてゆく。
一方、アトリも妻との関係を元に戻そうと努力するが、かえって泥沼化してゆく。
やがて猫は消え、犬は動かなくなる。そして男たちは誰もいなくなった。
当然のことながら人口36万人、世界一安全で平和な国アイスランドにも隣人トラブルはある。この映画の当事者たちにとって隣人トラブルは喉に刺さった小骨のように煩わしいものだが、他人からみれば深刻なようでちょっと滑稽な気もする。
89分という小品で凄いという映画ではないが、悲劇なのにブラックユーモアが隠し味になってなぜか苦笑してしまった。特にショッキングな「ワンシーン」はいつまでも記憶に残るだろう。
隣人トラブルをもう少し複雑にすれば隣国トラブルになる・・そんな気がしてくる映画でもあった。