自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

群像短篇名作選2000~2014

感動作、怪異譚、不思議小説、パンク小説、ハートウォーミング、ユーモア小説とバラエティに富んでしかも粒ぞろいの短篇ばかり。

 

黒井千次「丸の内」、村田喜代子「鯉浄土」、小川洋子「ひよこトラック」、竹西寛子五十鈴川の鴨」、町田康「ホワイトハッピー・ご覧にスポン」、本谷有紀子「アウトサイド」、川上未映子「お花畑自身」、長野まゆみ「45°」、筒井康隆「大盗庶幾」など。

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「鯉浄土」のなかの継子いじめの昔話「手無し娘」。継母が美しい先妻の娘を憎んで下男に山で殺させる。しかし下男は娘の両腕を切り落として命だけは助ける。手無し娘の腕の付け根から血の束が噴き出た。娘は痛みをこらえて呪文を唱える。

「手はなくとも 血はめぐるな 手はなくとも 血はめぐるな」

娘の血は止まり、新しい腕が生えて、彼女は幸せな結婚をする。

 

「お花畑自身」夫が亡くなって家を手放した女は、丹精込めて作った庭のお花畑への愛着を捨てられず、その中に身を横たえ埋まってゆく。

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「大盗庶幾」はある少年の成長記だが、いつのまにか「怪人二十面相」誕生秘話になってゆく。「ジョーカー」誕生秘話に比べるとあまりにも能天気すぎて思わず笑ってしまった。

 

五十鈴川の鴨」私と友人は伊勢神宮五十鈴川で鴨の親子を見た。友人は「いいなあ」と言い、私も「いいなあ」と合わせた。友人はなぜか結婚をせずに家族ももたなかった。

ある日、女が訪ねてきて友人の死を告げ、死ぬ前に友人は五十鈴川の鴨の親子をみることができたお礼を伝えてほしいと言った。私は初めて友人が被爆者だったことを知った。