もし時の流れがなかったら
地球上の12の地点に降り立った卵型の巨大な宇宙船。モンタナ州の宇宙船とコンタクトをとるために言語学者のルイーズと物理学者のイアンが呼び出される。
「地球に来た目的は何なのか、彼らの要求と正体を知りたい」というのが政府の要請だった。
思考は言語によって形作られる、だからエイリアンを理解するのは科学ではなく言語だとルイーズは考え、まず会話を試みる。
エイリアンは会話に視覚言語を使っていた。それは表意文字でしかも書き言葉と話し言葉には関連がなく、とても効率的なコミュニケーションだった。人類のコミュニケーションには無駄が多かった。
その上、彼らの言語には時系列がなかった。彼らには時の流れがなく、すべてが「現在」だった。つまり彼らの世界は「動画」ではなく「絵画」だった。
エイリアンは人類を助けに来たという。エイリアンにとって3000年後に人類の助けが必要になるからだ。それは「ウィン ウィン」の関係だった。
一方、ルイーズの幻覚の中に知らない少女が何度も現れる。少女は誰なのか。
じつはイアンと結婚して生まれるルイーズの未来の娘だった。エイリアンの贈り物なのか、ルイーズは未来が見えるようになっていた。
しかし娘は大人になって重い病で死んでゆく。誕生から死までの娘の「人生の物語」をルイーズは知る。そんな未来をルイーズは選ぶ。何よりも娘と共に生きた「現在」が大切だったからだ。
量子力学の奇妙な世界を思わせる知的な映画だ。