地獄と極楽は紙一重
フランス、ベルギー、ギャスパー・ノエ監督
若いダンサーたちへのインタビューという平凡なシーンから始まる。ダンサーたちは自信満々に将来の夢を語る。
男女22人のダンサーたちはアメリカ公演のために厳しいリハーサルをおこなっていた。
それが終わり、打ち上げのパーティーが人里離れた広い建物内で行われる。全員がサングリアを飲みながら踊りだす。赤や青の光の点滅、爆音のような音楽と激しい動きのダンスシーンが続く。
ところがサングリアのなかにドラッグが混入されていた。
やがてダンサーたちは狂気にとりつかれ、パーティーは狂喜乱舞、阿鼻叫喚、魑魅魍魎の世界に変わる。黒人の男二人の猥談が延々と続き、放尿する女、ナイフで自分を傷つける女、レズ、近親相姦、服に火が付き絶叫する女、妊婦の腹をける男、まるでソドムの市か地獄絵図のようだった。
96年の実話に基づく物語。ストーリーらしきものはなく、ただただ叫び声が響き渡るだけだった。
ダンサーたちはどのような幻覚を見ているのだろう。ダンサーたちの狂った行動を見ているうちに「LSDの幻覚世界の中に入るとこうなるのか」と思う。それは極楽から地獄への道であり、地獄と極楽は紙一重だった。
面白いというタイプの作品ではないが、怖いもの見たさで最後まで目が離せなかった。LSDの疑似体験が出来るユニークな映画だった。