インド映画の新しい波
インド、フランス、ロヘナ・ゲラ監督
インドの大都市ムンバイ、建設会社の御曹司アシュヴィンの婚約が破談になり、田舎育ちのラトナは傷心のアシュヴィンのマンションで住み込みのメイドとして働くことになる。
ラトナは親の一存で結婚させられ夫は4か月後に亡くなり、19歳で未亡人になった。村の風習で死ぬまで未亡人のまま暮らさなければならなかった。人生終わりだった。
それでもラトナはファッションデザイナーになる夢を諦めていなかった。そのために裁縫教室に通いだし、表情が明るくなってゆく。そんな姿を見ているうちにアシュヴィンはラトナに好意を持つようになる。
アシュヴィンから名前で呼ぶように言われるがラトナはいつも「旦那様」と呼んでいた。ある夜、アシュヴィンに愛を告白されたラトナは「連絡しないで」と言って、マンションを去ってゆく。
インドのラブストーリーは甘いだけのものではなかった。そこには身分社会と古い因習が立ちはだかっていた。でもどの国でも恋のときめきは同じだった。
「♪失うものは何もない 一歩踏み出して生きてみよう・・♪」という歌が流れる。
ラトナはその歌通りに一歩を踏み出す。その一歩がじつに感動的だった。とても繊細でナチュラルでしかもテンポがよくて、一粒の真珠の輝きをもった作品だった。