自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ラストレター 2020年

岩井ワールドの叙情性

日本 岩井俊二監督

舞台は緑あふれる宮城県、姉三咲の葬儀に参列した妹の裕里、三咲あての高校の同窓会の招待状を手渡された。姉の死を告げるために同窓会に出席するが、姉と勘違いされてしまう。

同窓会で初恋の相手乙坂鏡史郎と再会する。でも彼が愛していたのは姉の三咲だった。裕里は姉のふりをして文通を続ける。いつしか乙坂と裕里は1992年の高校時代の出来事を懐かしく思い出してゆく。

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行き違いから乙坂は三咲の娘鮎美とも文通を始める。二人は郵便が待ち遠しかった。

乙坂と裕里の会話の中で真相が徐々に明らかになってゆく。不幸な結婚をした三咲は病死ではなく自殺だった。乙坂は売れない作家で「三咲」という小説だけが出版されていた。

 

「Love Letter」「花とアリス」で岩井監督のロマンチックな世界にすっかり魅了された。この「ラストレター」でも女性の一瞬の美しさを見事に切り取っていた。

この映画を傑作と言うつもりはないが叙情性にあふれ、瑞々しい少女に目を奪われる一本だった。

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手紙はメールと違っていつまでも形として残り、そこには自筆の温かさと自分の忘れていた過去があった。

 

何十年も前にもらった手紙を読んだことがある。友人からの手紙がほとんどだったが、すっかり忘れていたものもあった。読んでいるうちに手紙を出した人たちの気持ちが伝わってきて、胸が熱くなった。ただ残念ながら「Love Letter」は一通もなかった。