自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

レ・ミゼラブル 2019年

人生そのものの格差

フランス ラジ・リ監督

150年前の1862年6月のパリの民衆蜂起、バリケードのなかでは「自由、平等、博愛」をあらわす三色旗が翻っていた。

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2018年、サッカーのワールドカップで優勝したフランス、熱狂し凱旋門前で国旗(三色旗)を振りながら「フランス万歳」を叫ぶ国民たち。その中に三色旗を身にまとった黒人少年の姿があった。三色旗のもとに国民が一つになっていた。

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ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の舞台となったパリ郊外の貧困層や移民の多い犯罪多発地区モンフェルメイユの警察署に赴任してきたステファン、彼は二人の先輩警官クリス、グワダと共に町のパトロールに出かける。黒人少年イッサがロマのサーカス団から子ライオンを盗んだことで黒人ギャング、ムスリム同胞団、そしてロマたちが対立する。

 

イッサを追っていた3人の警官のひとりグワダが思わずイッサをゴム弾で撃ってしまう。その様子をドローンが撮影していた。映像がネットに流れることを怖れて、3人の警官は映像が記録されたSDカードを探し始める。

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やがて警察や大人に対する少年たちの怒りが爆発し暴動がおこる。

そこには「自由、平等、博愛」の三色旗のもとに一つになった国民の姿はなく、ただ親から子供へと綿々と続く貧困と怒りがあった。

 

グローバリゼーションの時代、貧富の格差だけではなく、今まで見えていなかった人生そのものの格差がはっきりと見えてきた。人々は分断され、盤石だと思われていた資本主義と民主主義が揺らぎ始めている。