現実の耐えられない軽さ
フランス サフィ・ネブー監督
50代の美しい女性、大学教授のクレールは離婚歴があり二人の息子がいた。彼女は精神分析医の治療を受けていた。クレールは過去の出来事を分析医に語り始める。
年下の恋人リュドに捨てられたクレールはSNSの世界に足を踏み入れ、姪の24歳のクララに成りすます。そしてクレールはリュドの友人のアレックスとSNSの世界で知り合い、二人は恋に落ちる。
クレールは「彼と出会うことで自分は生きている」と感じ、それは現実では得られない歓びだった。いつしか自分を24歳のクララだと思い込む。
アレックスはクラに会いたいと思うが、真相がばれることを恐れてクレール(クララ)はアカウントを削除し、消息を絶つ。
リュドからアレックスが絶望のあまり自殺したと聞かされたクレールは、狂気じみた妄想の物語を作り上げ分析医に話す。しかしその物語の結末はなぜか自分の死だった。
そして「怖いのは死ぬことじゃない、一番怖いのは見捨てられること」「目覚めたまま夢を見ていた」とクレールは話す。分析医は真実を知るためにリュドを訪ねる。やがて意外な真実が明らかになる。
若さを失ってゆく中年女性の喪失感の物語が、いつの間にかゾクッとする人格乖離のサイコスリラーに変わってゆく。
自分の中にもう一人の自分の存在に気づくウディ・アレン監督作品「私の中のもうひとりの私」もなぜか50代の女性で大学教授だった。