自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

淀川長治と沢木耕太郎

沢木耕太郎セッションズ」より

1991年に「ダカポート」に掲載された沢木耕太郎淀川長治の対談

 映画評論家の批評はほとんど読まないが、沢木耕太郎の映画評だけはよく読んでいた。文章が端正で、どこか感性が私に似ているような気がしたからだ。

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「あなた残酷だ。自分がハイクラスだから、私をバカにしてる。そういうことを言って僕を喜ばせようって(笑い)」「一方的に淀川さんの話をお聞きするだけでいいのならということで来たんです」「それはビッグ・ライ、大きな嘘というもの。心の中ではこのジジイをいじめてやろうと来てるんです」

「僕はすごく気持ちのやさしい人間なのに」「そんなにやさしくない(笑い)」

「淀川さんの人生から映画を全部とっちゃうと何が残ります?」「僕から映画をとったら?やっぱり残酷な男だ、お前は(笑い)」

 

当時の皇太子殿下(浩宮さま)が淀川さんに会いたいというので東宮御所に呼ばれた。

皇太子殿下に「あなたどんな映画が好きなの?」とお聞きしたら「ルキノ・ヴィスコンティが好きです」とおっしゃったの・・・「ベニスに死す」はと聞いたら「一番好きです」・・

で、パパは、今の天皇陛下ね、何が一番好きですか、と聞いたの・・「ローマの休日」が大好きです、とおっしゃった。・・ママ(美智子さま)は「哀愁」です、と言われました。

皇太子殿下(今の天皇陛下)の好きな映画が「ベニスに死す」とは意外だった。

 

淀川長治沢木耕太郎人間性が充分に伝わってくる粋でユーモアがあって、丁々発止とした対談だった。