男の身体に女の心が宿っている
ベルギー、ルーカス・ドン監督
ドン監督は2009年ベルギーの新聞のトランスジェンダーの少女がバレリーナになるために奮闘しているという記事からこの映画を思いついた。
トランスジェンダーの15歳のララは本名をヴクトルといい、父と6歳の弟との3人暮らしだった。ララは男として生まれたが女としてバレリーナを目指していた。国内で有数のバレエ学校に入学する。
男性の二次性徴をホルモン療法で抑え、バレエを踊るときは股間にテーピングしていた。文字通り血のにじむような努力で厳しいバレエのレッスンに耐えていた。
性転換手術を望んでいたが、今はまだ身体が手術に耐えられないので時期を待っていた。手術後は女性の二次性徴を人工的におこす予定だった。
しかしレッスンを続けるうちに好奇の目に耐えられなくなる。ララは手術を待ちきれずに医師に相談するがいま手術するのは危険だと言われる。
ララは女の子になりたいだけだった。しかし手術をしても何も変わらなかったら、と思うと怖くて不安になる。
そんなララを見て父は心配し声をかけるが、ララは大丈夫としか言わなかった。父は「大丈夫としか言わないから話し合えない。辛いと言えば話し合える」と怒りをあらわにする。それでもララは「大丈夫」と答える。
ララの身体は生命力にあふれ輝いていた。ララが男なのか、女なのか、わからなくなる。
神の与えた肉体の呪縛にララはある決断をする。それは私が初めて見る強烈なシーンだった。