自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ルース・エドガー 2019年

目に見えない壁

アメリカ ジュリアス・オナー監督

バージニア州、アーリントン、黒人で17歳の高校生ルースは7歳のとき、戦火のアフリカから白人夫婦(エイミーとピーター)の養子になった。彼は文武両道に秀で、スピーチも巧みで、誰からも称賛される模範的な高校生だった。

ルースは「アメリカ人になって幸せ」と優等生的なスピーチをする。

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そんな彼が思想家フランツ・ファノンについて書いたレポートで、世界史の黒人女性教師ウィルソンと対立する。ファノンが「意見の対立は銃で解決する」と主張していたからだ。

ルースのロッカーの中から爆発物を見つけたウィルソン教師は彼が危険な思想に染まっているのではないかと養母のエイミーに伝える。やがて養父も同じように疑惑を持つようになる。

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ウィルソン教師は白人に負けまいとする使命感が強く、黒人生徒たちを厳しく指導していた。しかしその指導は独断的で不公平でもあった。

一方、ルースは周りから「理想のルース」を求められ、必死でその期待に応えてきた。彼は弱音を吐くことができず自分を見失っていた。

養母エイミーの「自らを犠牲にしてあの子に人生を与えた」という言葉にも窒息しそうになっていた。目に見える壁はないが、目に見えない壁があった。

やがて学校で爆発事件が起こる。

 

ルースとウィルソンは熾烈なディベートと真実の追求でお互いを言い負かそうとする。「和」を尊ぶ日本とは違って、これがアメリカで生きるということだった。