自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ハリーとトント 1974年

人生は目的地のない旅のよう

アメリカ ポール・マザスキー監督

ニューヨーク、古いアパートが取り壊されることになり、72歳のハリーと愛猫のトントは長男の家に厄介になるが、どうも居心地がよくなかった。

ハリーはシカゴで書店を営む娘を訪ねる旅に出発する。

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トントのために飛行機と長距離バスに乗ることができず、中古車を買い途中で家出娘と道連れになる。二人でハリーの初恋の女性を介護施設に訪ねるが女性は認知症だった。でも昔を懐かしみながらハリーは初恋の女性とダンスを踊る。女性の幸せな顔。

 

ハリーがシカゴの娘に「歳をとれば不思議なことに友はみなあの世だ」と言えば、娘は「新しい友人をつくればいいのよ」と素っ気なく答える。

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シカゴからロサンゼルスまでルート66を中古車で走るロードムービー。ロサンゼルスで豪勢な暮らしをしている次男と久しぶりに会うが、次男は文無しだった。

 

老カウボーイのセールスマン、高級娼婦、呪い師のインディアン、ギャンブラー・・様々な人と出会いながらの旅だった。旅の最後にハリーは大切なものを失うが、静かにそれを受け入れ、一人で生きてゆく。

 

老いの寂しさと人生へのユーモアが微妙にブレンドされて淡々と物語は進んでゆく。感動作ではなかったが、「淡々さ」がこの映画の良さだ。

 

ロードムービーには映画の面白さがつまっている。それは人生の面白さによく似ている。出会いがあり、別れがあり、そこにドラマがある。