貧困の町ルーベの光
2019年 フランス、アルノー・デプレシャン監督
ベルギーに近いフランスのルーベ市は国内で最も貧しい町で犯罪が多発していた。ルーベ中央警察署長ダウードと警察官たちが犯罪事件を追ってゆく。
放火事件に続いて83歳の老女殺人事件が起こる。事件の通報者はクロードとマリーという貧しい二人の若い女性だった。二人の供述に食い違いがあり、どこか怪しいと疑いをもつ。そして容疑者として二人を取り調べる。
警察の厳しい取り調べ、正確な現場検証、生々しい犯行の再現など、緊張感あふれたシーンが映し出される。警察はクロードとマリーを容赦なく追い込んでゆく。やがて真実が徐々に明らかになってくる。このミステリータッチの緊迫感が映画の面白さだ。
そしてもう一つの魅力が、ダウード署長の人間性だ。犯罪が多発する貧困地区でおこる小さな犯罪、大きな犯罪、それにかかわってゆく人たちへの彼のまなざしは優しい。
家出した少女は両親のもとに帰り、婦女暴行犯は逮捕される。保険金詐欺の男には穏やかに警告する。そんなダウードの唯一の楽しみは競馬場で馬が走る姿を見ることだった。
「テネット」「ジョーカー」「パラサイト」とどれも評価が高く、面白い映画だったが、「引っかかる」ものがなくて、レビューできなかった。
ところが「ダブル・サスペクツ」は評価が低く、地味で渋い作品だったが、どこかレビューしたいと思わせるものがあった。映画って不思議だ。