昭和歌謡の世界
日本、降籏康男監督
メキシコ・オリンピックの射撃選手である警察官三上と3人の女たちの関わりを北海道の「駅」を舞台に描く。
1968年1月、妻のたった一度の過ちを許すことができなかった三上は妻直子と離婚する。直子は幼い息子をつれて銭函駅のホームから列車に乗って去ってゆく。彼女は泣き笑いの顔で三上に敬礼をした。目には光るものがあった。
1976年6月、増毛駅前の風待食堂で働くすず子、彼女の兄は暴行殺人犯として警察に追われていた。すず子は知能が遅れているふりをして警察の追求をのらりくらりとかわす。「芝居で俺たちをだましていた」と刑事。
すず子は暴走族の男の子供を身ごもるが堕胎する。何年か後、彼女は傷心のまま増毛を去ってゆく。
1979年12月、増毛の居酒屋の女将桐子、彼女はふらりと入ってきた三上と深い仲になる。孤独だった二人はぬくもりを求めあう。初詣の参道で桐子は昔の男と出会う。男は殺人犯だった。
桐子と三上が大晦日の夜、紅白歌合戦の八代亜紀「舟唄」を聴くシーンはまさしく昭和歌謡の世界だった。
「♪お酒はぬるめの燗がいい 肴はあぶったイカでいい 女は無口なひとがいい 灯りはぼんやりと灯りゃいい・・♪」
北海道の荒れた冬の海、波の合間を海鳥が飛びかっている。
世の中に男と女がいる限り終わらない物語があり、人は生きている限り誰かを想い続けるものかもしれない。「一度別れると、二度と会えない人のどれほど多いことか」と人は言う。