自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

夕凪の街 桜の国 2007年

50年にわたる被爆者家族の物語

日本 佐々部清監督

原爆投下から13年が経った昭和33年(1958年)の夏、広島、26歳の平野皆美は母と雨漏りがするあばら家に住んでいた。そこは被爆者たちが住んでいる地域で、銭湯では身体にケロイドのある女性が多くみられた。

弟の旭は疎開して水戸の親戚の家に預けられていて、被爆をのがれた。原爆で父が亡くなり、10歳だった妹も「熱いよ、痛いよ」と泣きながら死んだ。

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やがて皆実も黒い血を吐き、弟と恋人に見守られながら静かに息を引き取る。

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平成19年(2007年)の夏、東京、父親の石川旭が家族に隠れて家を出て、夜行バスに乗る。28歳の娘、七波は友人の東子と一緒にその後を追ってゆく。たどり着いたのは「夕凪の街」広島だった。

父はゆかりの人たちを訪ね歩く。その日は父の姉、皆美の50回忌だった。七波は少しずつ家族の過去を知ってゆく。

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東子の両親は七波の弟、凪生と東子の交際に反対していた。凪生の祖母と母が被爆者だったからだ。60年が経っても被爆に対する恐怖が消えることはなかった。

七波は50年前に亡くなった若いころの伯母、皆美の写真を見る。父の話を聞き、思わず七波の目から涙がポロリ。

 

前半は悲劇タッチ、後半はコメディタッチの展開で、痛ましくもあるが美しいタイトルのどこかノスタルジーを感じさせるいい映画だった。