グリコ・森永事件をモデルにしたミステリー
日本、土井裕奏監督
2018年、京都でテイラーを営む曽根俊也は父の遺品のなかにカセットテープと手帳を見つける。気になってテープを聴くと、それは1984年に起こった昭和最大の未解決事件(ギン萬事件)で犯人グループが使用した脅迫テープだった。その声は子供の頃の俊也のものだった。
事件では俊也以外に二人の子供の声が使われていた。それは犯人グループの一人、元警察官の生島の息子聡一郎と娘の望だった。
一方、大日新聞大阪本社では「ギン萬事件」の特集記事のために文化部の記者阿久津が取材を始める。日本とイギリス、過去と現在が交錯し、多く人がこの事件に関わっていた。
俊也は声を使われた二人の子供が今どうなっているのかを知りたくて、阿久津と協力して真相を探る。
株価操作を狙ったこの企業脅迫事件は30年以上が過ぎ、すでに時効になっていた。
声を使われた聡一郎と望には過酷な運命が待っていた。それがいちばん描きたかったものだろう。最近の邦画の中ではエンターテインメント作品として際立っていた。
映画なのにまるで上質のミステリー小説を読んでいるように引き込まれていった。
俊也の母親役はあの梶芽衣子だった。彼女を見ているとどことなく「さそり」の面影が残っていた。どのように歳を重ねてきたのだろうか・・私は訊きたいと思った。