自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

罪と女王 2019年

女性監督が描く性の衝動

デンマークスウェーデン メイ・エル・トーキー監督

性暴力や虐待を受けている児童を守る女性弁護士アンナは医師の夫ペーターと双子の娘たちに恵まれて幸せな家庭を築いていた。

夫と前妻の間の17歳の息子グスタフがスウェーデンの学校を退学になった。アンナとペーターは問題児のグスタフをデンマークに引き取って更生させようとする。暴力的だったグスタフも双子の姉妹やアンナに親しんでゆく。

アンナもグスタフも友達はあまりいなかった。

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ところがアンナは失った若さを取り戻すかのように、グルタフを誘惑して性的関係を結ぶ。やがて破局を迎えるが、グスタフはそれを認めることができずに、ペーターに真相を明かし、法律に訴えると言う。

アンナは「問題児のあなたを誰が信用するの。それに証明もできないわ」と冷ややかに答える。未成年との性的関係は違法行為でありアンナはすべてを失うことを怖れていた。そこにあったのは愛でも恋でもなく女の生々しさだった。

 

アンナは何事も強気で女王のように自分の過ちを認めない女性だった。しかし父親に虐待されていた少女を親身になって救う愛情深い女性でもあった。

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アンナはすべてを失うことはなかった。罪の意識に苛まれながらも「幸せ」に生きていくのだろう。

 

人の内面を深くスリリングに描く作品だった。特に後半からはゾクゾクするような緊張感にあふれ、重く、不穏な空気が漂っていた。

「R―15指定」の深く考えさせる映画だった。