自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

デンマークの息子 2019年

数年後のデンマーク

デンマーク ウラー・サリム監督

23人が亡くなった爆破テロ事件から一年、2025年、デンマークコペンハーゲンでは難民や移民の排斥を訴える民族主義集団の過激な行動が続いていた。

彼らは「デンマークの息子」と呼ばれ、その後ろ盾には極右の国民運動党の党首ノーデルがいた。彼は移民の市民権をはく奪し、国外退去させようとしていた。

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19歳のアラブ系移民ザカリアは反極右の過激派組織に加わる。そして国民運動党首ノーデルの暗殺を命じられる。過激派組織の仲間アリが暗殺の手助けをすることになる。しかしアリは警察の潜入捜査官だった。アリもまた妻と5歳の息子がいる移民だった。

 

「国民の生活を良くする」という誰もが異議をはさむことのできない公約を掲げる国民運動党が選挙で勝利をおさめ、政権を手にする。

ファシズムは選挙という民主主義の中から生まれる。

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経済発展のために移民が奨励されたことや西欧の人道的な価値観の負の部分があらわになってきた。

 

最近これほど「重い」映画はあまり記憶にない。民族浄化、人種差別、移民排斥、爆破テロ、ネオナチの暴力・・デンマークだけではなく、世界の未来は暗いものだと痛感させられ、そして暗澹とした気持ちになる。

お互いの「正義」が暴力と憎悪の連鎖を生んでゆく。これは近未来なのか、それとも「今」なのか。まだ解決策は見当たらない。