二つの人生が交差する庭園
日本、新海誠監督
15歳の高校生タカオは靴職人を目指していた。雨の日は午前中の授業をさぼり、新宿の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。靴をつくることだけが自分を別の場所に連れて行ってくれた。
6月、梅雨入り、いつものように日本庭園の東屋にいくと若い女性がビールを飲んでいた。ユキノという27歳の女性だった。
タカオはどこかでユキノと会っていたような気がした。二人は雨の日だけの逢瀬を続ける。
世の中を「うまく歩けなくなったの」と恋人と別れたユキノが言う。彼女が歩きたくなるような靴をつくりたいとタカオは思った。
梅雨が明け、夏も終わる。
ユキノはタカオのことを知っていたが、そのことを隠していた。タカオは子ども扱いされたと思い、「あなたはいつも大切な言葉を言わないで、自分は関係ない、と自分を傷つけないようにして、ずっと一人で生きていくんだ」と怒りをぶつける。
やがてユキノは四国の実家に帰った。
エンディングテーマ曲「RAIN」が流れる。
「♪言葉にできず凍えたままで 人前ではやさしく生きていた・・きみじゃない悪いのは自分の激しさを かくせないぼくのほうさ・・・どしゃぶりでもかまわないと ずぶぬれでもかまわないと しぶきあげるきみが消えてく・・♪」
冬になりユキノから手紙が届いた。
「歩く練習をしていたのはオレも同じだ。もっと遠くまで歩けるようになったら会いに行こう」タカオはユキノのために靴をつくった。
46分という短編なのでドラマ性がそれほどあるわけでもなく、感動作でもないが、リリシズム(叙情性)があふれた作品だった。